『サイド・バイ・サイド―フィルムからデジタルシネマへ―』★★★☆☆
至って真面目な映画史、フィルム史、カメラ史のドキュメンタリー。案内役がキアヌ・リーヴスなのは豪華で、さらに登場する監督たちも、ジョージ・ルーカス、デヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーラン、マーティン・スコセッシ、ジェームズ・キャメロンなど文句ない。
実際に映像をどのように撮影しているかというのは映画を観ていてもそうそうわかるものではないが、デジタル化がいかに映画で使える映像の幅を増したか、ということがよくわかった。一般人として作品を観ていても、「まあ、なんとでもなるんでしょ?」ぐらいにしか思わないが、ただ走っているシーンを併走して手ぶれ込みで撮影するだけでも、かつてのフィルムカメラでは不可能だったわけだ。
それが技術の進化によって可能になり、解像度も高まり、けれどフィルムにもよさがあり…といたって当たり前のことを語っているドキュメンタリーなのだが、どちらのサイドの意見もタイトル通り、きちんと並列させている丁寧な作品。どちらにもよいところがあり、悪いところもある。
全体的に言うと、画面全体を脳内のイメージ通りに完璧にコントロールしたいか、それとも得られた素材と広がる世界を最良の形で映像にしていきたいか、というところに、デジタルとフィルムの選択が現れるように感じた。フィルムでは思い通りにならない部分は多くある。けれど、それもまたよきかな、と受け止めるかどうか。個人的には、どちらのサイドにも好きな監督がいたので、結局できあがる映画が面白ければ撮影手段は何でもいいと思うが。