『ヒート』★★★★☆
『ダークナイト』の元ネタの一つとしてノーラン監督が挙げていたので興味を持って観た。アル・パチーノとロバート・デニーロのダブル主演という贅沢な作品で、ハードな犯罪モノ。おもしろかったが、2時間50分はいかがなものか(笑)。
犯人側と追う警察側、双方を同時に描き続ける。どちらにも同じくらい緻密な頭脳があると同時に問題も抱えており、どちらも仕事だけでなく家庭にも難を抱えている。そのため、ぎりぎりまでどちらが勝つかわからない。どうせこっちが成功するんでしょ、と萎える場面は出てこない。
だが、先にも述べたようにとにかく長い。後二十分縮められたらさらなる傑作に感じたと思うのだが、要素が多すぎるのだ。登場人物も多いし、人生が描かれているキャラだけでも多い。誰がどういう人だったか、把握するだけでも一苦労である。幸い、人種や外見を散らしてくれているのでそこまで混乱はしなかったが。
主要なテーマは人生と仕事、とか、男と女、とか、何のために生きているのか、そして生き様の愚かしさ、といったところで、非常に壮大だが、絞り込み切れていない、ともいえる。作品の焦点がややボケてしまっているのは残念だった。「かっこいい男の悲哀」あたりに筆者がもっと感情移入できれば違ったのかもしれないが。より「仕事と家庭」にフォーカスを明確に当てて貰ったほうがすっきりしたかもしれない。
とはいえ、ややエンジンがかかるのは遅いが、ひりついた犯罪描写と頭脳対決は魅力。