週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『チャッピー』★★★★☆

  以前から観たかった作品。前半、想像していたのとちょっと違った雰囲気だったので苦手感もあったが、だんだん登場人物のことが好きになってくる。『ロボコップ』になぞらえているのはわざとなんだろうなあ。

 『第9地区』のときもそうだったけれど、非常にSFが上手い監督だと思う。特にいいのは、題材からおおよそ想像付く展開である全体の2/3ぐらいが過ぎた後、想像もしていなかった大きな可能性まで物語が開けていく辺りからだろうか。

 犯罪もののテイストを強く加えた結果、尺が足りなくなってチャッピーの成長ぶりがあまり描けていなかったのは若干物足りなく感じた。『アルジャーノン』ほど明確に頭脳明晰になっていくわけでもなく、AIの成長ぶりを見せつけるようなお話しでもなかったのだが、最終的にはそこが描きたいポイントではなかった、ということだろうか。

 メインの登場人物のほとんどが前半部分、観客を苛つかせる行動を取りがちなので好感を持ちにくいのだが、ヨハネスブルグで生きるためにはこれぐらい全員しゃかりきで自分のやりたいことをやろうとしないといけないのかも知れない。最終的には全員に愛着を感じるようになったので、監督の狙い通りに嵌まったのかも知れない。

 登場人物の行動原理に時折疑問を感じる部分があったが(なぜここでこの人物を殺さないのだろう、とか、人間を助けるのなら意識を取り出す以前に病院に行かないと、とか。一言理由を入れてくれれば納得出来たと思う)、全体として監督は寓話として描いているからなのだろう。おとぎ話のように、成長していく機械人形の姿を描くことで、命のもう一つ先の姿を描いてみせる、と同時に、人間ではなくなった人間たちが、アウトサイダーになる未来を予感させるのは、『第9地区』と共通したものを感じた。