『グレイテスト・ショーマン』★★★★☆
サーカスを創始したショーの仕掛け人の実話……を土台にしたミュージカル。現代ウケするようになんだか感動的な大人物の物語風に演出してはいる(上に、至って善人のヒュー・ジャックマンが演じている)のでいい話みたいに見えるが、要素を拾っていくと、実際は商売のためなら何でもする外道だったのだろうな……と大体見当が付く。
ミュージカルとしてはオリジナル曲がかなり魅力的。『ラ・ラ・ランド』が予告編とは異なりかなりしっとりしたミュージカルであったのと対照的に、オーケストラやバンドをガンガン使い、時代背景も無視してロック調の曲もたくさん投入していて、期待通りのワクワク楽しい仕上がり。ダンスも相当テクニカルなパートが多く、主人公が上流階級の劇作家を引き抜こうとする下りは隠し芸的な愉しさすらあった。
物語としては先にも述べたように、全体的に美談風にまとめ上げているので深まりは一歩物足りない印象。差別を受けていた人々をショーアップして生きる場所を与えた……という現代的な視点で描いているのだが、実のところどうだったのかはすこぶる疑問、というか、そんなことはなかっただろう。このあたり、昔話をディズニーがアレンジするのと同種の強引さがある。
ミュージカルだからあんまり小難しいことは描けないだろうと思うが、そのまま実際の通りの狂気の成り上がりショービジネスマンの汚いところ満載の話として、ジャック・ブラック(『キング・コング』に出てきた映画監督みたいな感じで)あたりが演じたらどうなっていただろうかと思う。コメディとしてはたぶんそのほうが生っぽくって面白かったであろう一方、現状ほど客は入らなかっただろう。ショーに登場する差別を受けた人々の人生ももっと観たかった(実質描かれているのはショーを運営する側の物語ばかり)気もする。
いろいろ書いたけれど、楽しく観るミュージカル映画として上々の出来。最終的に、テントを使って動物もフィーチャーした移動式のサーカスが誕生した下りで、そういえばアメリカでは動物を使ったショーは愛護団体からの苛烈な反対で消滅し、古いサーカスが一つ潰れたんだったな、と思い出した。調べてみると、この作品で取り上げていたサーカスが、百年近い歴史に幕を閉じていた。