週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『リメンバー・ミー』★★★★☆


映画『リメンバー・ミー』日本版予告編

 ディズニー・ピクサー関係のアニメ作品だと、『アナ雪』や『ズートピア』は観に行ったが、決してたくさん観てきたわけではない。

 

 今回は本編上映前に『アナと雪の女王』の新作ショート作品が20分ほど流れたが、そちらは正直低調で★2つ。前作を知っていること前提の構成も疑問だし、そもそも「伝統」と執拗に言うけれど、翻訳がちょっとズレてるんじゃないだろうか。重々しすぎて違和感がある。Traditionだと思うけれど、しきたり、とか、決まり事・・・・とか、ある程度柔軟に訳したほうがよかったんじゃないだろうか。

 お話も、短い中にやたら曲を詰め込んでいるので薄い。やりたいことがない中で、無理やりドラマを作ったような印象。人気があるからかオラフをメインに据えていたけれど、そもそもオラフは天然の人外キャラなので物語が深まりようがないのだ。アナが同じことをやっていたほうが面白かったんじゃないかなあ。

 

 本編の『リメンバー・ミー』はさすが、期待通りの密度と感動。とにかくアイディアの量が圧倒的なのだ。隅々まで「面白い」が敷き詰められているので飽きる瞬間がない。メキシコ文化の細やかなリサーチも凄い。死者の国のルールも非常に納得がいくもので、現世で忘れられたら死者は本当に死ぬ、というよくある考え方を、祭壇に飾る遺影と重ね合わせるという発想も素晴らしい(写真が発明されるまではどうしてたんだろう)。少しだけ、異界への渡り方に『千と千尋の神隠し』に似た印象もある。

 

 また、老いた娘を愛する父、という構図は『インターステラー』を思い出した。何歳になっても愛する子どもはずっと子どもなのだ。中盤のどんでん返しも、家族で一致団結する展開の盛り上がり方も熱く、そもそも今まであまりアニメ作品の舞台にされてこなかったであろうメキシコの町並みの描写も、新鮮で面白かった。南米音楽のアップテンポなノリ、ギターの音色も美しく、主役の男の子の歌声が何より見事。登場する人の中では一番上手かったように思う。

 

 ただ、惜しむらくはメインのアイディアとテーマが若干のズレがあるように感じた部分。「生と死」をアイディアの根幹に据えつつ、描いている主題は「家族」。まったくズレているわけではないのだが、同じ死者の国への訪問を題材にして、生と死について正面から描くことも出来たのではないかな・・・・と思うの。しかし実際は「家族における生と死」といった取り上げ方。もっと直接的に「死」について、ピクサーの作品が切り込むところを観たかったな・・・・とちょっと思う。

 

 また、主題のせいか、どうしても物語の結論が保守的なところに落ち着いてしまう(問いかけそのものも保守的)なのが、どうも惜しく感じる。「そりゃそうだよね」という万人向けの答えが出てしまうのだ。これだけ大規模で複雑な作り方をしているのに、わざわざ2時間かけなくても誰でも納得いくような家族の大切さを描くというのは、ちょっと物足りない。家族を愛するか、夢を追うか。死んだような生を生きるか、生を生ききって死ぬか。数多くの人に喜びを届けるか、家族の中で静かな喜びを抱くか。いろんな死に方をした人、生き方をした人を描くことも出来たはずだ。ちょっとこぢんまりとまとまりすぎてしまったかな、という感想は出てしまう。

 

 とはいえ、劇場は涙する人が大勢いた。物語のまとめ方も見事。気持ちのいい佳作でした。