週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ブラック・パンサー』★★★☆☆


「ブラックパンサー」予告編

 超ヒット作で、しかも監督・ライアン・クーグラーの前作はあの神作『クリード』ということで大変期待して観に行ったのだが、実はヒーロー映画としてはかなり普通な仕上がり。ただ、「普通である」ということが特別だと感じた。

 

 想像以上に出演者はアフリカ系で占められている。名前があってセリフもあるような白人はマーティン・フリードマンアンディ・サーキスだけ(サーキスの素顔の演技をたぶん初めて見た)。さらにストーリーのほとんどはアフリカのワカンダで展開される。軸になるのは王を嗣ぐ儀式。結果として、観ていても「ハリウッド映画」というより「アフリカの映画」を観ているような感覚のほうが強かった。たとえば、『スラムドッグ$ミリオネア』を観ている時も(最高の映画だけれど)インド映画だという印象はほぼない。インド人の出演者が出ているハリウッド映画、という感覚。

 

 しかし、本作は登場人物の動機から世界観まで、アメコミヒーローとはいえ周到にリサーチされたアフリカ文化をベースにし、そして徹底して敬意を払っている。舞台をアフリカにして主人公をアフリカ系にするだけでは起こりえない感情を観客に味わわせることに成功している。対抗する悪役の設定も、決して単なる悪人に留まらない深刻で悲しみに満ちた動機を持たせている。マーベル映画らしい、社会問題に対して意見を提示するスタイルを貫いている。白人のキャラクターが誰も彼も「脇役」といった扱いなのも、他の映画でアフリカ系俳優が演じているポジションと同様で、これも新鮮みがあった。

 

 ただし、ヒーロー映画として観ると至ってノーマルな作品だと思う。プロットそのものはキャラクター紹介がメインになるためシンプルで、事件自体も個人的な復讐話に終始している。バトルシーンは、前作を彷彿とさせる超長回しや、終盤の部族同士の戦争シーンで魅力的な部分はあるものの、ブラック・パンサー自体がそんなに特別な能力を持ったヒーローではないため、映像自体に画期的なポイントは少ない。状況をセリフで説明しているだけのパートが多いのももったいない。

 

 また、監督は前作でもそうだったが、リアリズムの演出に非常に長けていてわかりやすい演出を用いる。トリッキーな見せ方でアキさせないようなタイプではなく、堅実な映画作りをするのでファンタジー的なパートが結構地味なのだ。ワガンダのシーンよりも、もっと現実的な舞台を増やしたほうが面白かったのでは無いだろうか・・・・といっても、キャラもの映画の一作目では難しいだろう。

 

 登場人物たちは誰も彼も魅力的で面白い。主人公の寡黙なエリートらしいスタイル(普段着がえらいかっこいい)、主人公の妹の対照的にはっちゃけた天才科学者キャラ(ラノベみたい。いい意味で)、悪役・キルモンガーの常に悲しい瞳(クリード!)、マーティン・フリードマンの可愛げのあるCIAエージェントもいい。大ヒットも納得だった。次作に期待。