週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『県警対組織暴力』★★★★☆

 

県警対組織暴力 [Blu-ray]

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  深作欣二監督の名作と聞いて見始めた。スーパーヒーロー映画を観すぎたから別物を観たかった、というのも。

 初めのうちは典型的なヤクザモノと暴力警官のシーンが連続していて、比較的平均的な邦画かな、という印象。暴力シーンはたくさん登場するのだが、暴力者と暴力者がつるんでいるので事態は安定しており、緊張感はない。

 

 しかし、それも意図的な演出。暴力と無法で均衡を得ていた世界に、平均的で裏表のない正義漢が入り込んでくることで、たちまちバランスが崩れ出す(その正義漢こと「若手エリート捜査官」役が強面の梅宮辰夫なのがものすごい違和感だったが…当時は別によかったのだろう)。表面的な正義によって崩壊していく一種の平和を描いていた。「善人」が登場することで緊張感が発生しているのだ。

 

 もちろん、安易にこの映画が提示している事実を肯定するつもりはない。ただ、清潔であること、正しいこと、美しいこと、声が大きいこと、強いことを振りかざして、「間違い」「醜態」「低劣」と見なされることを否定し、のみならず消し去ろうとする姿勢は、緊張と突然の崩壊を生み出す、というのは間違いないだろう。

 

 単純にカッコイイセリフの連続も楽しめるし、菅原文太松方弘樹の格好良さを楽しんでもいい。ただ、それ以上に、「非正義を悪と同一視することの安直さ、愚かしさ、危険性」について考えてしまった。