『県警対組織暴力』★★★★☆
深作欣二監督の名作と聞いて見始めた。スーパーヒーロー映画を観すぎたから別物を観たかった、というのも。
初めのうちは典型的なヤクザモノと暴力警官のシーンが連続していて、比較的平均的な邦画かな、という印象。暴力シーンはたくさん登場するのだが、暴力者と暴力者がつるんでいるので事態は安定しており、緊張感はない。
しかし、それも意図的な演出。暴力と無法で均衡を得ていた世界に、平均的で裏表のない正義漢が入り込んでくることで、たちまちバランスが崩れ出す(その正義漢こと「若手エリート捜査官」役が強面の梅宮辰夫なのがものすごい違和感だったが…当時は別によかったのだろう)。表面的な正義によって崩壊していく一種の平和を描いていた。「善人」が登場することで緊張感が発生しているのだ。
もちろん、安易にこの映画が提示している事実を肯定するつもりはない。ただ、清潔であること、正しいこと、美しいこと、声が大きいこと、強いことを振りかざして、「間違い」「醜態」「低劣」と見なされることを否定し、のみならず消し去ろうとする姿勢は、緊張と突然の崩壊を生み出す、というのは間違いないだろう。
単純にカッコイイセリフの連続も楽しめるし、菅原文太と松方弘樹の格好良さを楽しんでもいい。ただ、それ以上に、「非正義を悪と同一視することの安直さ、愚かしさ、危険性」について考えてしまった。