週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『デッドプール2』★★★★☆


Marvel 映画「デッドプール2」日本版予告 “俺ちゃん、ケーブルに会う” Ver.

 久々(?)のヒーロー映画。1ヵ月ぶりくらいか。正直、1作目は期待値が上がりすぎていて(よっぽどおかしなことをすると思い込みすぎていた)想像よりもずっとまともなヒーロー映画展開に「ふうん・・・・」と思ってしまった(それでも★4つだけど)。

 なので2作目はビデオでいいかな・・・・と考えていたが、まんまと宣伝施策のうまさにハマリ、早速観に行った。

 

 劇場は終始爆笑、レイトショーでも大賑わい。頭から終わりまで隙間なくサービス満点で、「俺ちゃん」のことを最終的には好きになってしまわざるをえない。X-Menに全く詳しくない自分でもニヤニヤ出来たのだから、かのシリーズをしっかり追っている人には楽しくて仕方ないだろう。思いも寄らないスターの登場に至っては、全編終わってから周りの観客に教えてもらう始末。気づけないネタが多数あっても充分楽しい。

 自分は基本的にX-Menシリーズが苦手で、自由すぎる能力が乱舞しているところにどうにも醒めてしまう。なので、メインヒーローの能力が絞り込まれている他のマーベル映画なら安心して観られるのだろう。いろんな能力がありすぎると、「何でもアリ」になってしまって「なんか、何とでもなるんじゃね? 能力組み合わせたら」という気がしてしまう(なので『アヴェンジャーズ』の1作目2作目は微妙だと思っている)。

 

 デッドプールはそこにあっさり水を差し、メタ視点でふざけてみせるので真顔で能力者バトルを観戦せずに済み、大いに笑っていられるのでありがたい。「何マジになってんの?」という『たけしの挑戦状』的醒め方である。しかし、マジにならないところとマジになるところを非常にきっちりと分けているので、メインのメッセージ性、気持ちの込めどころは外さない。

 この手のメタ作品はギャグの加減が非常に難しく、うっかりしつこくなったりやり過ぎたりすると、今度は客が醒めすぎて逃げていってしまう。主演のライアン・レイノルズのバランス感覚が非常に優れているので、行き過ぎそうなところでもサッと引いて、とても「ちょうどよい」笑いを提供してくれる。

 やややりすぎがあるとすれば、ヒーロー映画をたくさん観ている人にしか通じないギャグ、映画をたくさん観ている人しかわからないジョークが含まれていて、一緒に観に行った友人などは「よくわからなかった・・・・」の一言だった。ターゲット層と違うから仕方ないといえばそれまでだが、「知識」を前提とした笑いは気づかなくてもスルー出来るところに絞り込んだほうが親切なようにも思った。

 

 今回、初めて「どうしてちょっとだけデッドプールに食い足りなさを感じるのか」をわかった気がする。先にも書いたように、この作品の笑いは極めてクレバーな、考え抜いた笑いなのだ。本物の狂気や不条理、無意味さが生み出す笑いではない。破壊的なギャグが連発されるが、本気で作品世界を破壊しようという気はない。

 ギャグ漫画などを読んでいると本気の狂気を疑う(あるいは連載の多忙で狂気に陥った作家の)常軌を逸した笑いにたくさん接する。コメディアンを観ていると神がかり的な笑いを連発する瞬間を目撃することもある。また、映画を観ていると本物の異常性、不条理を感じる面白さ、心がざわつく笑いに接することもある。

 

 そしてこの映画にあるのはそういう笑いではない。巧みに計算され尽くした笑いだと思う。そういう意味だと『ポプテピピック』に近いのかも知れない。あの作品も狂気を装ったクレバーな作品だ。「ヤベーもん観た・・・・あれ頭おかしい」そうやって友達と共有出来る、自分だけの「ヤベー作品」になってくれる。そういう作品が、長い間愛されて、心に残っていくのだろうと思う。

 続編は・・・・あの終わり方だから、確かに大変かも(笑)。でも、『デッドプール3』じゃなくていいので、またライアン・レイノルズの演じるデッドプールが観たい。