『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』★★★☆☆
『マイティ・ソー/バトルロイヤル』の監督として一気に名が知れたタイカ・ワイティティ監督の前作。実は、以前一度途中まで観てやめていた。なんとなくノリが合わない気がしたからだ。ソーを観て面白かったので改めて最初から見直してみたのだが、その時の勘はある程度当たっていたと思う。面白いけれど、面白いだけなのだ。
シェアハウスをしているヴァンパイアたちの家に取材班が密着した・・・・というていのモキュメンタリー。要はおバカ映画のたぐい。しかし、内容と予算の割りにディテールがしっかりしているので、次第に引き込まれていく。
どのヴァンパイアも若干残念で愛すべきところがあり、愛嬌のあるキャラばかりなので、思わず好きになってしまう。また、一般的なヴァンパイアに関する知識を踏まえたギャグもまめに入れ込まれていて楽しい。もしもニュージーランドでヴァンパイアたちが人に知られず暮らしていたら・・・・という仮定を精一杯楽しみながら作り上げている。どうして人知れず暮らそうとしているのにドキュメンタリーの取材を受けたのかは不明だが。
だが、ストーリー性はほぼ全くない。YouTube上に、マイティ・ソーの舞台裏を描いたショートフィルムが公開されているが、ノリはほぼ同じ。
ドクター・ストレンジが活躍している時、ソーはいったい何してた?
これは長くて数分のネタなので笑いながら観られるが、『シェアハウス』は90分尺の映画だ。山や展開が薄いとなかなか笑いだけではもたない。そういう意味で、成長譚としての構造を導入せざるを得ないヒーロー映画はぴったりだったのだろう。
何かの暗喩だったりするのかなあ、と考えてもみたが、仮にそうだったとしても特に何かを訴えかけてきているとも思えない。長大なコント、ドリフの長編みたいな感じ。おそらく、説教臭くしたくなかったのだろう。やろうと思えばいかようにでも出来る題材なので、最初から最後まで馬鹿をやり続ける、という狙い通りかと思う。
とはいえ、だからダメだというつもりは全くない。笑えるところはかなり多いので、気楽に楽しい映画を観たい人、かわいいおじさんを観たい人にはオススメ。