週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『トッツィー』★★★☆☆

 

  記念すべき100本目の記事(一応)なので何の映画にしようかなーと思案していたのだが、仕事の事情で観なきゃいけなくなった本作に決定。前から観ようと思ってはいたのでいいけれど。感想は、よかったのだけれど・・・・という感じ。

 

 とにかく圧巻はダスティン・ホフマンの化けっぷりで、言われなければ「こういう個性派女優」と思って済んでしまいそうな役作りぶり。というか、こういう人いるよなーという感じの中年女性になりきっていて、しかもその変貌ぶりがほとんどメイクと演技で成り立ってるのが凄い。

 声もハスキーだがギリギリなくはない女性の声だし、物腰は見事。劇中、男性の姿のまま鏡を見て練習するくだりもあるのだが、練習を始めた瞬間、ちょっとした姿勢や手の動かし方だけで一瞬で女性っぽい雰囲気を醸し出す。ホフマンは他の映画だと演技が神経質すぎて疲れてしまうことが多いのだが、コメディでは愛すべき残念な俳優を演じきっていた。

 

 とにかくアイディアがいいので最後まで乗り切ったら★4つだなあ、サイドのビル

・マーレィも味があるし・・・・と楽しく観ていたのだが次第に後半になるにつれ、プロットのまとまりのなさが目につくように。傲慢な俳優が女優になることで何を描こうとしているのかが、今ひとつはっきりしてこないのだ。「周囲の人を困惑させてしまったから反省しなければならない」という方向に物語が収束していくのは食い足りない。

 そして最後の下り。これはちょっとないでしょ、と思ってしまった。というより、何も解決していない。正体を明かして、終わり。小粋な会話で、二人の物語はこれから始まる!的エンド。

 そもそも、物語の冒頭でも主人公の問題点が「傲慢で他人のことを顧みないから仕事がない」くらいしか設定していないので、正直解決するところがほとんどないのだ。男女の性差別についてもうちょっと切り込めれば確実に大傑作になり得たのだが、時代的限界か、もう女装はおしまい、というだけで終わってしまう。

 

 それに、主人公がこの仕事をしてまで何とか実現しようとしていた大切な舞台は、いったいどこへ行ってしまったのだろう? 看板だけで1ミリも描写されずに終わる。てっきり、この芝居がラストシーンになると思っていたのに。

 たとえばその舞台の中で、ずーっと「いる」とか「いらない」とか言っていたネクタイのシーン。これが主人公の男性性の象徴として登場するとか・・・・それをヒロインが客席で観ているとか・・・・思いつき程度の発想だけれど、ここで主人公とヒロイン、そして傷つくだけ傷ついた主人公の女友達、さらにドラマの共演者たちとの橋渡しを作ることも出来たんじゃないだろうか。2時間の上映時間を遵守するために消滅したのだろうか。だったら中間の、ヒロインの父親に迫られる下りはもっと縮めてよかっただろう。

 

 現在の視点からリメイクして欲しい作品。★はほとんど、ダスティン・ホフマンの演技に対するものです。