『ザ・ギフト』★★★☆☆
公開時に「アメリカで高評価」との評判を見て観たいと思っていた作品。サイコサスペンス映画・・・・と言っていいのだろうか。演出が上手いので途中までは大いにドキドキしながら観たのだが、オチが拍子抜けだった。
夫の高校時代の知人と引っ越し先の近所で出逢い、やや人付き合いの不器用な彼がプレゼント=ギフトをくれる、それを繰り返す・・・・という内容。ポスターを観ていたときはさぞかしおそるべきギフトをくれるのだろう、と思っていたのだが、彼からリボン付きで届くギフトはワインなど比較的常識的なものばかり。そこが面白い話ではない。
どちらかというと、夫・サイモンと知人・ゴ―ドの人間関係、いじめが人の人生にもたらす影響、いじめっ子のメンタリティ、因果応報、といったことについて総合的に描いている作品と感じた。もちろん、ラストシーンで本当の「ギフト=恩恵」も登場するのだけれど。大人になってから、過去のいじめについて描くというアイディア自体は面白いと思うのだが、この描き方が果たしてベストのものだったのかはいささか疑問符がつく。
物語のどの部分を最も描きたかったかにもよるのだが、いじめとその復讐とそれに巻き込まれる妻、という観点でサイコサスペンスを作るのなら、もう少しわかりよい形はなかったのだろうか。過去のいじめと同じ構図をサイモンが受け入れざるを得なくなるとか、何か周到な策が巡らしてあるのならラストシーンも衝撃があるのだが、ゴードが行ったことは比較的ベタな「薄気味悪い」復讐でしかない。
作り上げられた過去のせっかくの特異なシチュエーションも、現在のシーンで生かされなければ単なる回想の語り以上にはなりえない。サイモンが仕事を失ったのも単に彼が未だにいじめっ子メンタリティで仕事をしていたから、自業自得というだけのことで、別にゴードが何かをやったわけでもない。
ラストシーンの「ギフト」が開けられるシーンに過度なカタルシスを期待してしまったのも、まるで今までのシーンがすべて前振りであるかのように見えてしまった、いったん物語から退場した人物が実はとんでもない秘密を隠し持っていたかのように思わせてしまった演出が理由だと思う。正直言ってゴードのとった「行動」は想像の範囲内だったので、そこまで驚きはなかった。
見せ方を凝ってオチに期待を抱かせすぎると、「どんでん返し」への過度な期待が高まりすぎる。純粋に深刻な人間ドラマとして、いじめっ子が失墜しすべてを失う物語として描いたほうが面白かったのではないだろうか。
『ザ・ギフト』最悪の贈りものとは?(映画ネタバレなし感想+ネタバレレビュー)
こちらのブログでは、ゴードの行った復讐がいかにサイモンのやったことと同質か、そしてどこが異なっているか、が解説されていた。確かにそれは正しいかも。
ただ、だとするとサイモンは妻に捨てられるのではなく、子どもを愛さなければならない状況に置かれ続けるほうが面白いのではないだろうか? どうもこう・・・・細部の練り込みが釈然としないんだよなあ。