週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『MEG ザ・モンスター』★★★☆☆


THE MEG Official Trailer (2018) Jason Statham Shark Movie HD

 楽しみにしていたサメ映画。今まで観たことがあるサメ映画は『ジョーズ』『ディープ・ブルー』『シャークネード』と決して豊富ではないが、知的風ハットさんの動画でサメ映画レビューはふんだんに観ている。つまり大して数観ているわけではないが、無駄に頭でっかちになって妙に期待してしまっているタイプのたちの悪い客である。

 

 

 さて、今作はどうか。スター、ジェイソン・ステイサムを主演に迎え、中国の資本も投入し、メガロドンというアイディアもあって期待値充分・・・・だったのだが、何かと惜しいところが散見される映画だった。非常に惜しい。

 アメリカの観客にはいろんな人種をキャラに据え、中国の客には中国語のセリフで感動的なシーンをくわえ、さらにサメ映画好き日本人へはマシ・オカの活躍で目配せを忘れない、といろんなところに目は行き届いているのだが・・・・もっと大切なことはいろいろあると思う。

 

 まず、細かいSF考証に対する疑問や、シナリオの唐突さ、科学者のアホさ加減などはサメ映画なのでよしとする。

 なんでそこでそんな作戦になるんだよ、とか、他に手段があるだろ、とか、そんなことしてるから襲われるんだろ、とか、頭から終わりまで気になるところは大量にあるのだが、そんなことを言い出したらそもそも「サメは用もなく人を襲ったりしない」「深海魚が水面近くに上がってきたら即死する」という前提すら壊れてしまうので、気にしない。とにかくサメ映画を構成するために不可欠な要素はどれだけ無理があっても許容するつもりで観ていた。

 キャストも、「個性のやたら強い女性」「デブ」「やたら陽気でビビリの黒人」「金持ち」「研究者」などフリとしては十分すぎるぐらいに配分されていて、いつ何が起こるかワクワク感は絶え間なくある。

 

 のだが、肝心のサメそのものの怖さがなかなか伝わってこないのだ。今作のサメは「とにかくデカい」が売りのはずである。それなのに、引きの絵で「こんなにデカい」と示すシーンが一向に出てこない。なので今ひとつ、どれぐらいデカいのかがよくわからないのだ。むしろ、ポスター類のほうがよほどよくそれを表現出来ていた。

f:id:shoshikisodo:20180910002940j:plain

 ちなみにこういうシーンは無い。

 深海に出現する凶暴な巨大生物、という怖さを描くには、薄暗い中に現れる巨大な身体の描写が不可欠だと思うのだが、なぜ入れなかったのだろう。さすがに試さなかったとは思えないので、CGでやると思いの外チープに見えてしまったのかも知れない。

 

 また、どうにも話の盛り上げにまとまりが無いのも物足りなさを煽る。一個一個やっていることは割りと派手なのだが、少しずつ激しく、ヤバくなってくる、というような整理ができていないので、「これよりもヤバくなるってなったらいったい何が起きるんだ!?」という緊張感が生じにくい。

 研究施設で1人が襲われる⇒施設そのものが窮地に⇒何とか撃退か⇒サメはビーチへ⇒何とか倒さなくては! のように、「追い詰められてから反撃に転じる」みたいな感情の流れがこの手のパニック映画には必要だと思うのだが、なにせステイサムが強すぎるからか反撃に転じるターンが何回もやってきて、しかしもう一つ決定打にならない、という展開が繰り返されてしまう。サービスシーンをたくさん入れたかった気持ちはわかるのだが、アイディアは整理しないと死んでしまう。

 

 また、これはレイティングのためかもしれないが、いまいち人が死なない(笑)。いや、死んではいるのだが面白く死なないし印象にも残りにくいのだ。残忍な死に方で言えば全年齢向けの『ジュラシック・ワールド』のほうがよっぽど怖そうに見えたので、これは単純に監督の技量の問題だろうか。一杯死ねばいいとか血が一杯出ればいいという問題ではなく、見せ方が上手くないのだろう。

 また、個々のキャラの描き方も上手くはないので、死んだところで「ああ死んだのか」というぐらいの感情しか浮かばない。「パニック映画の登場人物が死んだ」という字義通り以上の印象がないのだ。物語の中で「ああこういう人なんだな」と感じた後で死んでくれれば、ろくでなしであっても喪失感を覚えさせることは可能だと思うのだが。テンプレ以上の人物が1人も出てこないのは脚本の詰めの甘さの問題だろう。

 CGとか演者と違って脚本は努力によって向上させることが可能なのだから、もっと頑張ってもらいたかった。とはいえ、笑えるところも多数だしやっぱり平均以上に金は掛かっているので、脳みそ空っぽになってサメが出てくる映画を観たい人にはオススメしたい。