週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『探偵はBARにいる』★★★☆☆

 

  初めての真面目に芝居をしている大泉洋を鑑賞。『水曜どうでしょう』はClassicで流れているエピソードは全部観ているくらいのファンではある。だが演技をしているところは一度も観たことがなかった。
 ★は3つだが、決して悪くない3つ。深みとか重厚さとは無縁の映画だが、非常によく出来た邦画のサスペンス佳作。これは大泉洋でないと撮れなかっただろう。

 

 ストーリーそのものは「夜はバーに必ずいる探偵にやってきた謎めいた依頼を解決する」という至ってベーシックなもので、探偵の描き方も工藤優作を彷彿とさせるベタなもの。音楽も大野克夫的なジャズで、オールディーズのかっこよさはあるが先鋭性はない。
 というよりどこをとっても先鋭性も斬新さもない。とにかく泥臭い要素しかない作品で、最初のうちは観るのをやめようか・・・・と思う部分もあったのだが、次第に引き込まれていく。重要なのはまず、メイン二人のキャラの良さ。

 

 大泉洋はとにかくクサいのだが、これはもうワザと。クサい台詞とクサい振る舞いでクサい設定のハードボイルド探偵をやっているのだが、これを大泉洋が真面目にやることで結果的にバランスが取れているのだ。彼の場合、どれだけ誠実にやってもどこかとぼけてしまうので、これぐらい恥ずかしいくらいのキャラクターをやった方が釣り合いが取れるのだろう。逆に面白おかしいキャラをやってしまうと、面白おかしくなりすぎてしまうかも知れない。三枚目に二枚目をやらせるというのは正しい判断。
 基本的にはどこから観ても「ザ・大泉洋」なのだが、普段が芝居がかっている分、演技をしていても逆に作り物感がない。むしろ、たまにカッコいいことをすると「意外とカッコいいじゃん」とプラスに働くのは得だと思う。

 

 そして相方役の松田龍平も、意外と台詞も少なく目立たないのだが、激しいアクションで大活躍。想像していなかったが、この映画アクションシーンで結構魅せてくれるのだ。かなり危険を伴いそうなバトルもスタントなしでやっていたりして目を見張る。
 さらに、脇を固める役者が誰も彼も上手い。中盤に出てくる「クズのおっさん」役の役者が目に焼き付くような演技を見せてくれるのもよい。悪役もやたらアクが強いが下手ではないので恐怖感も凄みもある。ヤクザ役の松重豊というのも(どうしても『孤独のグルメ』を思い出しがちなので)ストイックな怖さが魅力的。アイドル的な俳優が一人も出てこないので、安心して観ていられるのが嬉しい。

 

 また、大泉洋が特にそうなのだが、滑舌がよいのだ。当たり前のことなのかも知れないが、邦画ではこれが本当にストレスになる。「え? 今なんて言った?」と聞き返したくなるような演者が平気で主演を張ることが多い中(字幕入れろよ、と思うことが多々ある)、この作品は全員はっきりとした台詞回しで、しかも芝居が上手い。ストレスフリーなのはそれだけで点になる。

 シナリオも、驚きこそ少ないかも知れないがよく練り込まれていて飽きが来ない。登場人物全員にきちんとドラマが存在している。過度な外連味が無くても、芸術性を出そうという欲が無くても、社会に対する問題提起が無くても、単なる二時間ドラマに堕さないだけの内容がある。

 

 ここまで褒め称えていて★3つなのは珍しいが、やはりウェル・メイドな作品で、生涯記憶に残る大傑作という感じのものではない。なのでこの評価、だが、観て損をすることはまずないだろう。疲れているとき気軽に観る映画としてオススメ。