『アポロ13』★★★★★
先週の勢いでロン・ハワード作品を鑑賞したくなり、名作と名高い本作を鑑賞。名匠のさすがの安定感で、徹底した実話路線も完璧に娯楽作品として仕上げている。
正直に言うと風邪気味で、若干頭がぼんやりしているので劇中の科学的なセリフの詳細は頭に入ってこなかった(笑)。なので実際にどのような問題が発生しているのか、詳細までは把握し切れていないと思う。
しかし、それでも最後までだれずに見せきるのは、要所要所で問題をかみ砕き、次に達成すべきミッションをきちんと言葉で、図面で整理して、「要はこれに成功したらOK」「こうなったらアウト」ということを最低限観客に伝えているからである。そこさえ押さえておけば、3人の宇宙飛行士たちとその家族たち、NASAのスタッフの苦闘をど素人でも楽しみながら味わうことが出来る。
さらに本作の妥協のなさは、それでもなお、科学考証に妥協がなく、描写も手を抜いていないというところにある。わかりづらくとも実際に起きたことは正確に、数字も上げて描写している。実録物とはいえ、そもそも観客に伝わればいいとだけ思うのであれば、もっと軽めの描き方にしても充分成り立つはずなのだ。
にもかかわらずきちんと詳細を伝えることで、観客を馬鹿にしていない制作側、監督の姿勢も伝わる。わからないとしても実際に起きた事故で、人々が何を懸念し、どこに努力をしていたか、過度にレベルを下げずに多くの人々に理解出来るようこれだけの作品を作るのは、誠意がなければ出来ないことだろう。
CG黎明期の作品なので、ロケット発射の描写などは当然現代の作品と比べて見劣りはするものの、逆にそれ以外の特撮はどうやって撮影しているのかさっぱりわからない(無重力状態の撮影をいったいどうやって行ったのだろう?)。過剰な怒りや悲しみを演出せず、窮地に立ち向かう人々の普遍的な努力と勇気を見せる佳作。
付記)ウィキペディアによると、無重力シーンは実際に地球上で急降下する航空機を利用して無重力状態を作り出して撮影したとのこと。他に方法がないので可能性は考えたが、あまりに大変すぎるので「そんなことするはずないよな」と一笑に付していた手法だった。脱帽です。