『デス・レース2000年』★★★☆☆
古典的カルト映画。タイトルの通り、遙かな未来である西暦2000年のアメリカで行われている殺人レースを描いた低予算カーレース作品。もうどこからどう見ても低予算で、やっていることも馬鹿馬鹿しいのだが、どうも目が離せない魅力がある。『ロッキー』でブレイク前のスタローンが悪役で出演。
レースと言ってもたった5台で競争しているし、客は書き割りのようなのしかおらず、コースと言ってもその辺の道を爆走(フィルムを早回しにすることで)しているだけだ。主人公はお世辞にもカッコいいとは言えない面長の親父で、しかも陳腐なマスクにぴっちぴちのスーツ姿(なんか脚も短い)。超絶スタントというほどのアクションシーンは特にない。のだが、妙に終始、ひりついた印象が画面にある。
『マッド・マックス』(1作目)とか、『バニシング・ポイント』、『激突!』のような、欧米の何にも無い道をただただ走り続ける絵面というのは、たまらない虚無的な雰囲気を醸し出す。この映画も、車たちはチキチキマシン猛レースのような荒唐無稽な車だが、そのチープさも非現実感に拍車を掛けて、そんな中で命がけのレースをしている主人公らの奇妙な悲壮さを演出する。
世界観は『1984年』的な全体主義監視社会のイメージ。予算不足の結果、万事が安っぽく、パーティ会場などもお寂しい限りなのだが、それはそれで歪んだ全体主義の結果のようにも見えるから面白い。「なんだかよくわからん偉いもの」に対して反感を持つ人々の皮肉な感情と怒りだけは詰め込まれている。
レースの過程で人々は遊びがてら続々死んでいく。その設定は意外と考えられていて、何のためにレースが行われているのか、そのレースの中で何が起こるのか、はそれなりのルールが存在する。もっと作り込めば豪華にはなるだろうが、それによって失われる物もあるだろう。描かれていないことで漠然と想像されるこの世界の空っぽな雰囲気が、本作の魅力であるとも思えるからだ。
大して要もないのに女性の裸が頻出するなどわかりやすい、ジャンクな娯楽映画。