週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ボヘミアン・ラプソディ』★★★★☆


映画『ボヘミアン・ラプソディ』最新予告編が世界同時解禁!

 クイーンは父親が持っていたCDで子どもの頃からよく聞いていた。といっても知っているのはいわゆる超有名曲だけ、『ボヘミアン』以外だと『ウィー・ウィル・ロック・ユー』とか『ドント・ストップ・ミー・ナウ』とか、クイーンを知らない人でも普通に知っている程度の曲しか知らない。フレディの人生については、ゲイでエイズに冒されて亡くなった、以外はほぼ何も知らなかった。彼らの曲自体は好き。

 

 評価が非常に高いので、期待高めで観賞。胸熱く涙する直球の自伝映画で、何か「画期的」「新しい」と感じるところはなかったが、そんな細かいことはともかく、クイーンの曲を大いに楽しめる1作だった。エンドロール後は館内に拍手が起こるほど。『グレイテスト・ショーマン』が気に入った人はきっと嵌まる作品だろう。


Queen - Live at LIVE AID 1985/07/13 [Best Version]

 こちらが実際にクイーンが行った1985年の『LIVE AID』でのパフォーマンス。映画は、クイーンの結成からこの日のパフォーマンスへ至るまで全てを追う物語になる。てっきり、『スティーブ・ジョブス』のように、重要なポイントに絞り込んだ伝記になるのかと思っていたからだ。当然、人生の全体を描くとなると駆け足になってはしまう。

 実際、本作でも失敗や苦難はほとんど描かれず、フレディのシンデレラストーリーがばたばたと語られていく印象はある。実際には最初から成功の連発というわけではなかったようだが、映画上では『ボヘミアン・ラプソディ』の成功までほぼ何の引っかかりもなく進んでいく。希代の天才としてのフレディの成功は、感情移入出来ればこの上なく気持ちよい。フレディという人物は、問題も多かったが最高にカリスマ性のある、魅力的な人間だったのだと心から理解出来た。

 

 そして、中盤からは自分のセクシュアリティと周囲との関係性で悩み、道に迷うフレディの姿が描かれる。この時代にゲイとして生きることの困難さ、絶望が痛いほどに伝わる見事な演出と演技だった。大切な人との出逢い、ようやく訪れる夜明け、彼にやってくる辛い運命、それすらも飲み込み、乗り越えて仲間と共に、再び舞台へ立つ。1人の英雄の物語として、極めて明瞭に描き出されている。

 ただ、あまりに明瞭すぎる、ともいえる。彼の最初の妻であるメアリーの描写はアレで充分なのか? なぜ彼女とつきあい、結婚し、障害を友人として過ごすに至った? 他のバンドメンバーや、ブライアン・メイとの関係は? 要は、全てがフレディの人生を描くために準備されているので、深まりがないのだ。

 

 更に言えば、解釈の揺らぎを見いだす余地がない。制作側から「これが正解」と提示されているかのようなので、「もしかしたらこういうこと?」と深読みをすることができない。ここでこうなってここでこう感じたからこう、という、フレディ・マーキュリーの人生の読み取り方が、極めて明快に示されている。要は、文芸性は一切無いのだ。

 もし、フレディとメアリーの人生を中核に据えていたら、複雑な感情を描いた全く違う映画になっただろう。本作はあくまで、「フレディというスターの生涯」という英雄譚なので、おそらく誤解の余地すらない。良くも悪くもシンプルで、そこに食い足りなさを感じる可能性はある。冒頭に書いたように、伝記映画としての表現技法の斬新さもないので、そういった映画表現としての冒険も期待しないほうがいい。

 ライブシーンも、見る限りもはやパーフェクトに再現しているのだが、パーフェクトすぎてだったら本物でいいのでは・・・・と少し感じてしまう。まあ、映画のストーリーの中で観るからこその興奮もあるので、これは贅沢な意見だろうか。

 

 いろいろ書いたが、コピーバンドなども動員して作り上げたクイーンのパフォーマンス再現は見事で、二時間たっぷり彼らの音楽を楽しませてくれる。明日からをクイーンの音楽と共に気持ちよく過ごしていける、そして彼らのことが更に好きになる、愛すべきエンタテインメント作品だろう。

 

ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)

ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)

 

  ちなみに期待通りサントラがイカしてるのでぜひ。OPのあれ、やっぱりクイーンによるものだったんだね(笑)。『Don't Stop Me Now』のギター新録バージョンとか、特に熱くて好きです。