『ミーン・ストリート』★★★☆☆
マーティン・スコセッシ監督の第1回作品。ネットフリックスで期限が切れる寸前だったので観賞。途中まで受け止め方がわからず退屈していたが、途中から次第にエンジンが掛かってくる内容だった。
デ・ニーロ演じるどうしようもないクズの友人と、そいつに振り回されるマジメなイタリア系マフィアの甥っ子(演じるのは若い頃のハーヴェイ・カイテル)、この2人の物語で、冒頭から繰り返し、このクズ友人が何一つ出来ず、ただただ愚かしい生き様を曝している姿が描かれ、そしてカイテルが怒ったり、己に絶望したりする様が、明確な物語性を欠如させたまま展開されていく。
この時代のこうした青年たちの人生を何の優しさもなく突き放して見せつけ、終始手持ちカメラの不安定な映像でドキュメンタリー風に映し出していく映像の作りはハードで魅力的なのだが、いかんせん、今何をやろうとしている、何を魅せようとしているシーンなのか、まとまりに欠けることが多い。しかもデ・ニーロが「自堕落」といっても、バーで酔っている場面が続くせいか、登場人物の皆が似たかよったかのどうしようもなさをさらし続けているので、映画自体の狙いが明瞭になるまでかなり時間が掛かってしまうのが残念だった。
方向性がはっきりしてからの主人公二人の姿は、『キッズ・リターン』を思い出させた。ナントカしよう、どうにかなろう、まともになろうと思っても、絶対的になれない人は、やはりいるのだと思う。子どもの頃、クラスメートと話しているときに一切わかり合えない、と感じたときのあの距離感。「ちゃんと」生きる、ということがそもそもありえない人。クズ、としか表現のしようがないが、それでも見捨てる気にはなれない自分の甘さ。誰もにどこかで憶えのある、どうしようもない友人。
デ・ニーロの役は印象深く、そのへらへら顔の抱える哀しさは一見の価値がある。