週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ヘイル、シーザー!』★★★☆☆

 

  『バスターのバラード』に大変感心したので、同監督作品を観たいということで観賞。残念ながら肩すかしといったところか。

 主演はジョシュ・ブローリン。サノスのあの優しい目で、ハリウッド黄金時代の豪腕プロデューサーを演じる。他にも主役級のスターがぞろぞろ出演しているあたり、監督の人望が窺える。コメディであること、映画愛に満ちていること、いろいろな要素が三谷幸喜作品を想起させた。

 

 コメディとしてはかなり手堅くまとめた作品で上映時間も短く、小品といっていい仕上がり。題材は、映画撮影中の主演スターの誘拐事件を軸に、様々などたばたが癖の強い人物によって繰り広げられていく。一個一個の要素は面白く、印象に残るが、全体として繋がったとき、特に何について描いているというまとまりに欠けている。最後の最後に少しだけ、まとめらしいものもあるはあるのだが、そんなにすっきりした結論が出るわけでもない。

 ひとつひとつのエピソードは全く絡み合ったりしない。誰かの人生に何かの結論が出るわけでもなく、まさに「ハリウッド黄金期のある1日」でしかない。だとすれば100分ちょっとのこの尺はやや長いだろう。もしかしたらこの頃から、監督は短編連作が描きたかったのかも知れない。この映画も、むしろその形式、一人の忙しいプロデューサーの元に訪れる様々な問題を描く群像劇、のほうが似合っていたように思う。

 

 面白いところとしては、劇中劇の「黄金期のハリウッド映画」があるだろう。ざっと見た限りだが、この作中作のシーンに限っては、CGなどを使わず、当時の技術で出来る範囲のことだけで撮影しているように見えた。カメラも物理的にあり得ないところには動かず、背景は手描き、音楽も場合によっては現地での生音、キャストのメイクもいかにも付けひげ、かつら、といった風情。現代のスター、ジョージ・クルーニーらがそうした古典的な方法で作られた映画の中にいるのは、妙に面白かった。