週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『IT/イット ”それ”が見えたら、終わり。』★★★★☆

 

  思うところあってホラーに慣れていこう、ということで先週に引き続き、以前から気になっていたホラー映画を鑑賞。正直、猛烈に恐がりなので前半はジムでトレーニングをしながらおっかなびっくり観る、というぐらいしかできない・・・・。

 感想として、「IT」が意外と物理的存在なのだな、ということに驚いた。基本的にはビックリさせる系のホラーなのでビビリの自分からするとなかなかしんどい。とはいえ、スティーブン・キングらしい「80年代アメリカ郊外系ジュブナイルストーリー」だったのでそこは楽しめた。

 

『ET』『グーニーズ』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『スタンド・バイ・ミー』、そこから影響を受けた『スーパー8』『ストレンジャー・シングス(ドラマだけど)』『MOTHERシリーズ(ゲームだけど)』『ライフ イズ ストレンジ(ゲームだけど)』『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか(日本だけど)』あたりの系譜、ジュブナイル映画の正統派の形式を踏まえている。

 決してメインストリームにいけない、負け犬の少年少女たち。家庭に問題を抱え、自分にどうすることも出来ない悩みに苛まれている。彼らが、ひと夏の冒険を乗り越えて人として成長する。その成長のきっかけが、奇妙な化け物である「IT」だった、というのが、他の作品との違い。

 

 先にも書いたように、「IT」自体の怖さは割りとベタ。暗いところから突然出てきて、怖い物の姿で怯えさせて、ピエロの姿をした本性(?)を現して食らいついてくる。この「食べる」というのが想像していないアクションだった。もっとじっとり精神的に怖がらせてくるのかと思っていたが、そのまま直球で襲ってくるモンスターなのか、と若干拍子抜けする部分もあった。

 だが、ありとあらゆる手段(スライドの機械まで操って)で頑張って襲ってくるアイディアの豊富さと、その描写の丁寧さ(さすがCGの類いは贅沢に作られていて見飽きない)は、怖いと言うよりは次に何が来るのかと楽しみにさせてくれる作りだった。ずっと観ていると若干面白くなってくる。

 

 どちらかといえば怖いのは、主人公たちを取り巻く親たちのキャラクターのほうだろう。ヒロインの父親のはっきり言わないながらも明らかな匂わせ、異常に干渉してくる母親、過剰ないじめや黒人差別を行う不良たち。田舎町に住む人々の明らかな狂気だが、子どもはその世界しか知らない以上、その狂気には気づけない。

 自分たちの生活、人間関係、信じているもののおかしさは、別の居場所を手に入れないと客観視出来ないのだ。「80年代アメリカ郊外系ジュブナイルストーリー」の面白さは、そんな少年たちの(いつか近い日にきっと乗り越えられる)苦しみをエンタメとして観られるところにある。

 

 正直、「IT」とは何なのか、とか、この街には何があるのか、とか、その前にこの大人たちの異常性はもっと掘り下げられなかったのか、とか(この辺はきっと続編で描かれるのだろうが)、もっと一貫した「IT」という恐怖のテーマ性(この恐怖は何を描こうとしている? ジュブナイル的な側面とより有機的に接続出来なかったか?)など気になる部分はあるが、よく出来た佳作であるのは間違いないだろう。

 果たして続編ではどこまでこの物語が掘り下げられるのか、今から楽しみだ。その前に、原作を読んでしまうかも知れないけれど。

 

IT(1) (文春文庫)

IT(1) (文春文庫)