週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ラッシュ/プライドと友情』★★★★☆

 

  名匠ロン・ハワード監督の作品。F1レーサー二人の長きにわたるライバル関係を描く。演じている二人が実際のレーサーに非常に似ているので、エンディング近くで登場する実際の光景の写真が本物かどうか判断に苦しむほどだった。

 さすがの安定した演出で、生き様が全く真逆の二人を描ききる。常人には理解出来ない本物の勝負師たちが、どんなレベルで戦っているか、命を賭けて戦うとはどういうことかが、まるで本物のレースを観賞しているかのように映し出される(どうやらレースシーンは基本的にCGではなく実写らしい)。

 

 この手の専門分野での対決は、どうしても問題が細部に及ぶため門外漢が興味を失いやすい。レースも一戦一戦の勝敗のみならず、最終的にはポイントでの対決になってきたり、あるいは車両の改造もどこをどう弄っているのかなどは詳しい人間にとっては面白いが、大半のF1に興味がない人間にはどちらでもいい問題になる。

 それを最小限の知識だけ印象に残るように周到に計算された脚本のおかげで、今起きていることがどの程度重要なのかが迷わず伝わってくる。問題はF1レースを通じて起きた出来事、それを中心に男二人がどのように人生が変化していったか、むしろメインはそちら側にある。

 

 命を賭けて戦うということにこだわり、目の前で生を燃焼することに全てを注ぎ込むか、それとも徹底して計画と計算の元に歩み、理知的で必要以上の危険を避ける人生を選ぶか。ふたりの人間に起きたある大きな出来事は、結果的にそんな彼らの普段の選択とは、正反対だった。

 その時、いけ好かないと思っていた相手の選択が、生き様が、自分自身を変えていく。「プライドと友情」という日本語版サブタイトルは、本質とはズレているだろう。彼らは頑なだったプライドを捨てることすら厭わなくなり、そして彼らが互いに感じていた物は「友情」というシンプルなものでないことは、ラストシーンを見ても明らかだ。

 普段のハワード監督の絵作りと違う、ハードな色合いも魅力。人生の交わる瞬間を活写した佳作。