『告白』★★★★☆
『来る』から続いて中島監督作品を鑑賞。
確かに、これがベストフォームでの作品だとすると『来る』はかなり上手くいっていない作例だったのかも知れない。非常に緊密にくみ上げられ、映像美も文句のない一品。
終始描かれ続けるのは人から人に向けられる「悪意」の連続。復讐、怨念、憎悪は断ちきられることなく、どこまでもどこまでも続いていく。具体的に「誰が悪い」と言い切れるほど単純な問題は一度として描かれない。
救われる人物は誰一人おらず、学校の教室という悪意が密閉された瓶のような環境で、人生が破壊されていく人物が幾人も幾人も「告白」を繰り返していく。果たしてその告白は誰に向けられ、何の意味があるのか。贖罪でもなく、吐露でもなく、ただ、本当なら隠し通したかった秘密の暴露が続けられる。
手放しで褒めたい美しい作品、なのだが、一点。作中に登場するある病気の描写について、個人的な倫理観からどうしても肯定する気になれない。
原作から存在している描写であることはわかっているのだが、果たして、この病気をこのように描写しなければ成り立たない作品だったのか。たとえば同様のフィクションの病気を設定して描くことは出来なかったか。
こうした場合、重要になるのは「この病気でなければ描けないと認められる内容かどうか」になる。たとえば病気が社会的にどのように受容され、どのような影響を及ぼしているかが作品内容に不可欠な要素であり、他の病気にすると込められたメッセージ性、文学作品としての価値に深刻な影響を及ぼすのであれば、あえて病気を、傷をえぐるように描く意味が生まれるだろう。
しかし筆者が見た限りでは、本作はこの病気そのものに焦点を当てた内容とは思えなかった。軸は別の部分にあり、また病気の登場過程などから考えると、他の病気に移し替えることも容易としか考えられなかった。
この違和感がぬぐいきれないのが理由で、★1つマイナス。しかし、秀逸な作品であることに変わりはない。