『アントマン&ワスプ』★★★★☆
アントマン&ワスプ MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
- 発売日: 2019/01/09
- メディア: Blu-ray
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レンタルスタートしたのでようやく鑑賞。『エンドゲーム』まではあと1作。
正直、期待の高さからすると弱いところも多数。風呂敷を広げたおかげでSFとして突っ込みたくなる要素も増加。しかし後半のアクションシーンの愉しさで総合点はよし、という印象。脚本は前作のほうがよかった。
MCU作品を今のところ全作品観ているのだが、2本目が面白い物はなかなか少ない(たぶん『キャプテン・アメリカ』ぐらい)。アントマンは1作目がSFコメディとしてかなり秀逸な作品だったので期待していたのだが、今回はやや切れ味に鈍りを感じた。
まず物語の開始時点は前作の続きではなく、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の続き。主人公たちが仲違いしたところから始まり、その解消が物語の全体を貫いているのだが、いかんせん彼らの対立のきっかけが別作品にあり、回想シーンすらないので、この作品単体で言うと何に対して怒っている/怒られているのかがややぼやけている。そのため感情的な動機が今ひとつ薄い。
もう一つの軸は前作からの積み残し、量子世界に30年前取り残されたヒロインの母を取り戻す、というところ。こちらについてはSFとして理屈にいろいろわからないところが多い。「量子世界だと30年間飲まず食わずでも生きられるのか」「母はどうやって現実世界へとメッセージを送ってきたのか」「『母の身体に蓄積されたエネルギーを使って云々』ってどういうことか」などなど、筆者が量子力学を知らないことをさておいてもなんだかよくわからん理屈が乱舞する。
『アントマン』シリーズ自体はライトなSFなので、ドラえもんぐらいのシンプルなSFアイテムが出てくることに文句はないのだが、前作は「とにかくスーツを着たら小さくなれる」という最小限の理屈だけがあれば全体の筋が通っていた。本作はその時その時の筋を通すために突然出てきた理屈が山ほどあるので、「?」とおもっているうちに話が進んでいってしまう。
今回は物体の縮小拡大が自由自在に行えるようになっているのも、細かいところが気になってしまう。ビルを縮小して持ち歩くと、中に入っているものは散乱してしまうのだろうか(笑)。くだらない指摘かも知れないが、そういうことをちゃんとしないとSFは破綻していくと思うのだ。質量保存の法則もやっぱり気になってしまう。
今回のヴィランは身体の分子が離散する体質になってしまい、様々な物体をすり抜けることができてしまうというキャラなのだが、それならどうして服を着れるのだろうか。どうして地面に落ち込んでしまわないのだろうか。
それと今回、コメディ要素が空回り気味だったのももったいない。笑わせる目的のシーンが定期的に挟まるのだが、そのやりとりが物語の進行に関わらない、完全に挿入されたシーンなので、その間ストーリーが停止するのだ。面白いセリフは、通常退屈しそうな説明シーンなどにこそ組み込むべきものである。
後半のアクション&カーチェイスを連打するあたりから、うまくアイディアと絡み合って楽しいヒーロー映画になっていくので総合すると楽しい映画だったが、どうも前作をなぞりつつ弱まっている、という印象。もちろん、エンディング以降の「いつものアレ」は期待通り、というか期待以上の内容だったので、ワクワク出来てよかったのだが。