週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『くすぐり』★★★☆☆


David Farrier on why "Tickled" is much darker than expected

 ネットフリックスオリジナルマークは確かついていなかったが、日本では劇場公開されていないドキュメンタリーフィルム。YOUTUBE上に上げられている、男性が男性をひたすらくすぐる「競技」の動画に興味を持った記者がその制作者を追ううち、深刻な問題に辿り着いてしまう、という作品。

 

 まず題材は上々。ただただ人がくすぐられている、という内容は一見すると罰ゲームめいていて笑えるのだが、その背後に何の意図があって、何のために「くすぐり競技」をやっているのか判然としない、という不気味さ、異様さが漂っているのが、展開に期待を持たせる。同時に、早い段階でくすぐり競技の運営者にあたる人物が、異常な情熱で記者を攻撃してくるのも、意味や狙いの不明瞭さが手伝ってミステリー的に見える。

 さらに、このたぐりにくい取材困難な題材を、記者たちは相当丁寧に関係者を捜し当て、話を聞いているのも好感が持てる。くすぐり動画制作者、くすぐりスカウト、など不可解な職業の人物が続々出てくると、世の中にはいろんな食い扶持があるものだと感心してしまう。

 

 とおおむね面白いのだが、肝心の「犯人」への接近が物足りないのが残念。いや、ほぼ真相に辿り着きかけているのだが、「犯人」の動機についての描写は皆無に等しい。そこが一番気になるので、犯人の人となりや犯行のきっかけが知りたいのだが、そこは手が届かなかったようで(犯人の直近の知人や関係者への取材がほぼ不可能だった模様)、結局最後まで「不気味」で終わってしまう。

 犯人の義理の母までは迫れたのでその気になればさらなる取材も可能だったはずだが、ここでやめてしまったのは何か事情があったのか、それとも何らかの偏見を助長しかねない事実が出てきたのか、あるいは完全に裏取りができない状態に陥ってしまったのか。怪しげに描写しようと思えばいくらでも出来ただろうから誠実に作ったのだろうが、やはり「犯人」が何者だったのかは、ある程度の落としどころを作って欲しかった。