週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『クリード/炎の宿敵』★★★★☆


『クリード2』予告編 (2019年)

 ロッキーシリーズ大好きなので我慢出来ずに早速観賞(以下、ネタバレは避けてます)。過去作の個人的な評価を並べると、

 

『ロッキー』★★★★★(余裕で人生ベスト10入り)

『ロッキー2』★★★★☆

『ロッキー3』★★★★☆

『ロッキー4/炎の友情』★★☆☆☆

『ロッキー5/最後のドラマ』★★★☆☆(あのオチさえなければ・・・・)

ロッキー・ザ・ファイナル』★★★★☆

クリード/チャンプを継ぐ男』★★★★★

 

とまあ、シリーズ物としては異様なほど満足度が高い。『4』は「なんだこりゃ」という印象ではあるものの、愛すべき娯楽映画、という感想なのでそこまで悪くは無いと思う。そして前作『クリード』はもう大傑作で、部屋で観賞していて1人あまりの熱さに感涙していた。

 そこからの続編なのでどうしても期待は上がってしまう。残念ながら前作の監督

・脚本を手がけたクーグラーは外れてしまい、今回はシリーズ伝統のスタローン脚本ということで、果たしてどうなる、と思いながら映画館に足を運んだ。

 

 総評としては、「ロッキーシリーズの安定感ある1作」に落ち着いた、という感じ。前作はクーグラー監督の凄まじい情熱が炸裂し、脚本も恐ろしく緻密、演出も「一体どうやって撮ってるんだ」というレベルのワンカット撮影が連発、そして胸に突き刺さる「負け犬の命を賭けた思い」の描写。ロッキーの人生も大きく動き、個人的には完璧な作品だった。それに対して、やはり今回は良くも悪くも原作者・スタローンによるシリーズ正統続編で、ダメなところはないが驚きも少ない、という印象。

 そう、ダメなところは全く無い。むしろよく出来ている映画で、今回がほぼデビュー作に近いケープル監督もいい仕事をしている。作風としては『ファイナル』以降のドキュメンタリー調の非常に生っぽい映像で、飽きがこない現代的な不安感が終始漂っている。老いたロッキーの描写は相変わらず切なく、スタローンのキャリアベスト級の演技は前作から変わらない。

 ストーリーも前作からきっちり進んでいて、シリーズ物としての停滞感は感じられない。ただ一点、前作でロッキーに起きた「出来事」の描写が非常に薄かったのは今回気になったのだが、全く触れていないわけではないので、もしかするとこれは次回作で本格的に描くつもりなのかも知れない(筆者は今回、「その出来事」が起きるのではないか、と想像していた)。

 

 ただ、あの傑作『クリード』から考えると、ボクシングシーンの描写に革新的なところは見当たらなかった。むしろ前作の尋常ではない攻め方から考えると、ノーマルな描き方に終始していたとすら言えるのは残念。『ファイナル』は本物のボクシング会場と観客を使って、実際のボクシング中継としか思えない映像を作り出すことに成功し、前作に至っては観客をボクサー視点に完全に同期させて緊張感を生み出していたことを考えると、今回もまたそうした新しさ、驚きをどうしても求めてしまう。

 今回の敵役であるイヴァン・ドラゴの息子、ヴィクター・ドラゴは本物のボクサーであり、その身体、繰り出されるパンチの圧はとても映画とは思えない恐ろしさが伝わってきた。マイケル・B・ジョーダンももはや人気俳優で、彼に求められる役作りのレベルが完全に俳優がやることを超えてしまっているのも壮絶で目を見張る。のだが、その辺は『ロッキー3』あたりで一度味わってるんだよなあ・・・・という気もする。

 

 というわけで、シリーズ中の1作としては上々ながら映画としてはやや「並」という印象・・・・だったが、終盤の「とあるシーン」には完全にやられた。今回の映画でスタローンが何をやりたかったのか、繰り返される「父と子」というモチーフが辿り着いたのが全く想定外のシーンだったので、参ってしまった。そう、これは「クリード父子」「バルボア父子」だけの物語ではなかったのだ。この予想外の方向からのパンチ、物語の構図の逆転劇に、劇場も涙を流す人が多かった。

 盟友にあれほどの花を持たせるスタローンはさすが。この作品はある「呪い」の物語だったのだ。そしてこのシーンがロッキーにとってどんな意味があるのか、想像するだけでたまらない思いに駆られる。そう、本作は一連のシリーズの中でもしっかりとした存在意義がある1作なのだ。一貫しているのは「何のために闘うのか」。

 ロッキーシリーズは基本的に構造が全て同じなので、ラストに「どうやって勝つのか/負けるのか」というバリエーションを持たせるのもなかなか大変なのだが(しかもやれるのはボクシングの試合のみ)、ここに来てこれをやってのけるスタローンはやはり脚本家としても優秀な人なのだな、と感心ひとしきりだった。