週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ジョン・ウィック:チャプター2』★★★★★

 

  『マトリックス』は公開当時リアルタイムで観ていた。中二心の塊のような世界観で、なんかよくわからんがカッコイイ魅力に充ち満ちていたので、未だに自分への影響は大きい。その後、キアヌもウォシャウスキー姉妹もパッとしないまま二十年ほどが経過していたが、キアヌのほうが先に脱出に成功したのが本作の前作、『ジョン・ウィック』だった。

 

  こちらも以前鑑賞していて、★3つといった印象だった。筋立て自体は薄味で、妻と大切にしていた犬を殺された復讐に元殺し屋の男が闘う、というだけ。一作目の時点では予算もおそらくそこまでではなかったのか、それほど印象に残るシーンも無い。アクション映画としては平均よりやや上、魅力的なのはキアヌの存在感ぐらいか、といった印象だった。映像そのものは綺麗だったが。

 しかし、2作目になって一気に魅力が増したのには驚いた。

 

 まず、アクション自体がこの作品、非常に独特だと感じる。緻密に組み上げられたアクションほど、ある種のダンスのように見えてしまいがちだ(こと、『マトリックス』はそうだった)。しっかり練り上げたからこそ、本当に闘っているようには見えなくなってしまう。実際に殴り合いをしているときはやりながら考えて、相手に手を出しているので、動きは少しずつどんくさく見えてしまうのが本当だろう。実際の格闘技を観ていてもそのように見えるが、映画の闘いはこの手が出たら次はこう、というのが決まっているのだからある程度は仕方ない。

 しかし、本作は動きがいい意味で洒脱ではないのだ。最初、1作目を観たとき、キアヌも老いて動きが鈍ったか、と思ったのだが、おそらくそうではない。ジョン・ウィックは痛めた身体をきちんといたわり、足を攻撃されたあとはしばらく引きずり、闘うときは次の一手を考えながら攻撃している(ように演技している)。おかげで、他の作品とは少し違ったリアリティが生まれている。

 

 そしてそのリアリティがこの作品の場合、非常に大切である。世界観自体が少年漫画のように荒唐無稽なので(NYの住人の半分くらいは殺し屋なのだろうか)、アクションや演技がリアリティを感じさせなければならないのだ。そのギリギリのラインを付けているので、馬鹿馬鹿しさに醒める瞬間がない。

 くわえて、この世界観を説明しないのがよい。いろいろと背景に秘密やルールがありそうな殺し屋の世界が登場するのだが、展開上必要なこと以外は何も説明してくれない。おかげで「たぶんこういうことなんだろう」と想像するしかなくなり、説明しない分破綻もなくなる。

 さらに、前作から引き続いて「妻との思い出」を執拗なまでに破壊されるジョン・ウィックの姿を観て、本作の狙いが非常に明確になった。手に入れたはずの日常を嘲笑気味に壊され、徹底的に傷つけられる主人公の悲しみ、暴走するしかない感情を前作から引き続き積み上げて描写している。

 

 1作目を観たときはてっきり、繰り返し系の作品(007的な)かと思ったので、毎回こんなことを繰り返していろんな復讐をやっても飽きるだけだよな、と誤解したのだが、このシリーズはどうやら、一度引退した殺し屋が全てを失いながら他の殺し屋たちと闘わざるを得なくなる、崩壊の物語のようだ。果たしてこのままどこへ辿り着くのか、3作目も観たくなった。

 言うまでもないがアクションの質は絶品で、目を疑うような動き、どうやって撮影しているのかわからないハードなバトル、カーアクションもクールだが『ボーン』シリーズほどハードでリアルになりすぎない、程よい「おとぎ話感」を残している。ちなみに3作目の予告編はかなりぶっ飛んでいて、期待出来そう。