『ゲーム』★★★★☆
デヴィッド・フィンチャー監督作品は大好きなのだが、この作品はまだ観れていなかった。どうやら日本の配給元が他作品と異なるらしく、扱いが悪い状態が長年続いているため未だに国内でブルーレイ化もされていない。ネットフリックスに入ったのでようやく視聴。
途中までは評価に悩んでいたが、終盤三十分ほどでようやく納得した物語。万人に勧める気にはならないが、最終的には嫌いではない作品だった。
フィンチャー監督作品の中でも特に言及回数が少ない作品なので、内容に問題でもあるのかと不安に感じながら見始めた。そのせいもあってか、全体の半分近くまでは退屈にすら感じられるシーンが続く。起きる出来事の凡庸さ、単純なサスペンス、あまつさえ安っぽいロマンス。97年の作品で『セブン』の2年後なので、若手とは言え妥協のない作品作りはすでに知られている時期のはずだと訝しんだ。
ところが、そうした「くだらなさ」自体が作品の仕掛けであり意味がある、と次第にわかるにつれ、緊張感は高まっていく。あえてネタバレは避けるが、どこまでもインフレを起こしていくことで全てに対する不信と不安を高めていく。安心と停滞の中に生きていた主人公を、段階を踏んで追い詰めていくために「くだらない」とすら感じられるサスペンスフルな過程が必要だったわけだ。
終盤の盛り上がりと絶望は面白く、そこからの開放感はあってよく出来てはいるものの、「だからどうした」と感じる人も少なからずいるだろう。内容的には星新一のショートショートでもありそうだし、彼の作品ならもう少し気の利いたオチを付けているかもしれない。
また、作品冒頭でも言及があった自己啓発セミナーや、カルトの手口との共通点もあるので、このエンディングを真正面から受け止めるべきではないかも知れない。結局は馬鹿馬鹿しい「ゲーム」を徹頭徹尾見せつけられたに過ぎないからだ。そもそも主人公は性格の悪い金満家、という感情移入困難なタイプなので、彼が多少救われたところで他人事なのに変わりは無い。ストーリーそのものはハッピーエンドに見せているが、フィンチャーがそんな素直なことをするかどうか(スタジオから要求されてそんなエンディングを用意したとしても)、違和感は残る。
その疑問や不信感も含めて、最後には楽しめる作品だった。