『アドレナリン』★★★★☆
風邪を引いてずっと寝込んでいるので、寝込みながらなんとなく観るのにちょうどいい映画を選んでみた。正直一切期待せずに見始めたのだが、思いの外挑戦的で締まりのある内容に大変満足。
シナリオは非常に単純。主人公のジェイソン・ステイサムが毒を打たれ、アドレナリンを体内で出し続けないと死んでしまう状態になってしまう。だもんでありとあらゆる手段でテンション上げまくりながら自分に毒を打った奴を探しに行く、という話。アクション映画はシンプルかつパワフル、そしてオリジナルな筋立てが最高。
上記のような設定なのでとにかくステイサムは頭から終わりまでキレつづけている。どうしてもまともな映画だとどこかでしんみりする下りを作らざるを得ないのだが(まともな人間ならどこかで落ち込むのが普通なので)、そこでテンションをリセットする手間すらも省いてとにかく暴走し続けている。それでも何とか保つよう、映画そのものも90分ちょっとのちょうどいい尺。
シナリオもワンアイディアをきっちり転がしきっている。アドレナリンを出し続けるためにはどんな行動が必要なのか。まさかしないよな、と思っていたこともどうどうとやりきってしまうのはギリギリ時代的に許されたからなのか、今のステイサムのポジションだとやれないだろうな、という目を疑うようなシーンも平気で登場するので笑ってしまう。
想像以上に「おバカアクションコメディ」に近い内容なので、一生懸命アドレナリンをほとばしらせるために疾走する本気の主人公は、笑いを取りながらも手に汗握らせてくれる。きっちりこちらの想像を数段超える内容を、ステイサムが全力で演じきっている。ただ、その分、顔を顰めるようなシーンも多いので万人には勧めがたい内容かも。
そして「やり過ぎ暴走おバカ」の行き着く先として、奇妙に切ない、やりきったところに物語は辿り着く。行きすぎた暴力は笑いに繋がるが、本作も気持ちのよい幕切れを選択しており、無駄は全く無い(なぜか続編があるようだが、観なくていいだろうという気がする)。
もちろんシナリオの細かい粗や撮影のミスなどは散見されるが、大した問題ではないだろう。余計な欲がなく、大人の配慮もない、やりたいことをライトスタッフと共にやった佳作。