『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』★★★☆☆
たぶん、『ハング・オーバー!』以降だと思うが、アメリカ製のラフに楽しめるオッサン主体のコメディ映画には最近大体、この手のサブタイトルがついている。
『ホット・ファズ』なんかにもついていた。これはイギリス映画だけど。
まあポップな雰囲気をたたえつつ、作品の内容をざっくり伝え、原題も残す、という意味だとそれなりに機能的なのだろうと思う。ただ、これをされるとどうも規格化されてしまい、どれもこれも一律に同種のコメディに感じられてしまうのはマイナスなような気もする。
コメディ映画といってももちろん、『ハング・オーバー!』のようなガチガチのコメディもあれば、『ホットファズ』はむしろブラックユーモアのテイストが強かったりするし、結構アクション寄りだったりすることもあれば、意外なほど叙情的なときもあり、その辺のニュアンスがこの「ポップサブタイトル商法」の時点で捨象されてしまうように感じるのは自分だけだろうか。
さて、本作はかなりの低予算ながら、アイディアで走りきるタイプの作品、言ってみれば『カメラを止めるな!』的な存在の作品だと考えていいだろう。『カメ止め』ほどの緻密な脚本ではないが、ブラックな笑いも込めつつ1時間30分を充分楽しませてくれる作品と言える。
あらすじは、「きったない森の小屋を念願の別荘として購入した田舎のおっさん二人が大学生グループに殺人鬼だと勘違いされた結果のどたばたコメディ」と要約していいだろう。ちょっとした恋愛沙汰あり、ほっこりエピソードあり、アクションありのザ・娯楽といった内容だが、一方で、上記のあらすじから想像するよりも思いの外グロいネタもたっぷり仕込まれているので、スプラッタ系ギャグを笑い飛ばせない人は避けておいたほうが無難だろう。
シナリオは惜しい、の一言。もう一押し二押し内容を詰められていれば、このアイディアで出来ることをもっときっちり詰め込んでいれば、傑作になり得たアイディアだろう。「頭悪そうな大学生の集団が薄暗い森の中で怪しい男に巡り会ったらそいつは大体殺人鬼」というホラー映画のテンプレをパロって、勘違いドタバタコメディがいくらでもやれそうなネタなのだが、不思議なほどその部分の掘り下げが足りない。
むしろ、コンプレックスのある男の恋愛ものとしての側面がフィーチャーされがちで、この男のキャラがかわいくて魅力的なのだが、メインアイディアの「勘違い殺人鬼」と彼のキャラクター性がしっかりマッチしているか、というと疑問が残る。そのためにはもっと、彼が本来はどんな人間で、しかし外見はどう見えているか、同時にリア充大学生たちが内面と外面にどんな差異を抱えているかを明確化した上で、ヒロインをその狭間で揺れ動いている人物としてきちんと描写するべきだろう。
どうも「物語として描きたいこと」と「メッセージとして伝えたいこと」がもう一つ合致しないまま、最後まで行ってしまった感が否めない。悪くない作品なのだ。観て損するとまでは言わない。ただ、惜しいな、という仕上がりだった。