『スパイダーマン(2002)』★★★★☆
MCUより遙か前、今日のヒーロー映画隆盛の源流とも呼ぶべき作品。大昔に一度観た記憶はあるのだが、ほとんど覚えていなかった。これからシリーズ全てを鑑賞予定。
久々に観ると、この堅牢な作りにほっとする。ヒーロー映画流行前の作品は、今から観ると大体ストーリー構成にぬるさを感じる物だが、本作はスパイダーマンの持つ物語の本道・王道を行く内容で、今観ても古びてはいなかった。
サム・ライミ監督による演出はウェルメイドで美しく、奇抜さに逃げたりしない横綱相撲(最近監督、名前聞かないけどどうしてるのだろうか)。ピーター・パーカー役は現在と比べるとかなりマジメくんの雰囲気であるトビー・マグワイア。悪役があくの強いウィレム・デフォーで見応えがある。
今やっているスパイダーマンのシリーズは、「いかにしてスパイダーマンになりしか」の部分は意図的に語っていない。いずれやるのか、語りで済ませるのかそれとも今さらどうでもいいだろうで終わらせるのかまだわからないが、結構キャラとして説明しないといけない要素がたくさんある(のと、アイアンマンが父親役として機能している)ので不要と判断しているのだろう。
正直、今から特記したくなる要素はあまりない。映画としての出来は現在観てもすこぶるよいのでオススメだし、ピーター・パーカーの運命の壮絶さとしては、現在のMCUで描くのは少々困難なくらいの重さもあって面白い。むしろ『ダークナイト』三部作にも近い深刻さも背景に抱えている。
また、MCUの映画は「アベンジャーズのストーリー展開に接続しなければならない」というおそるべき縛りを抱えているため、ヒーローに向けられる問いかけが複雑になりすぎている(難解、でも重厚、でもなく、単に複雑)のだが、そういったくびきから自由な本作は、より本質的で骨太な問いかけを主人公に向けている。また、他シリーズとの絡みもないので、スパイダーマン自身の周囲の人物との関わり合いが濃密に描かれているのも魅力。
極めてよく出来ている佳作、と言ってしまえばそれまでかも。でも、2作目以降はまだ観たことがないので、それによっては感想も変わってくるかも知れない。