週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『メリー・ポピンズ リターンズ』★★★★☆


「メリー・ポピンズ リターンズ」本予告編

古典を今創る意味を考え抜いた、新たな古典ミュージカル

 実は前作を観ていない。曲はいくつも知っているのだが、ストーリー展開は全く理解していない状態で、続編を観に行ってみた。主な目当ては贔屓のコリン・ファース

 以前の『プー』でうーん、となったことから不安があったのだが、綺麗さっぱりそんな気持ちを払拭してくれる快作だった。ザ・伝統的ミュージカル映画。とってもオールドスクール。しかしそれがよい。

 

 正直言えば、おそらく、ストーリーは前作を観ていたほうがよくわかる・・・・というより、もっと楽しくなると思われる。前作の出来事を踏まえたシーンや小道具、登場人物が多数登場するので、それをわかってみればもっと感動出来ただろう。

 ただ、それなしにしてもあの手この手を使って昔懐かしのミュージカル映画を楽しめる。CGも撮影方法も技術としては高度なのだろうが、あえてセットっぽい雰囲気の町並み&ライティング、あえて昔っぽいダンス、あえて懐かしのハリウッド映画らしい曲調、とあくまで昔のミュージカル映画の枠から出ない。たとえるなら伝統芸能のやり方だろう。

 

 最初は、「今あえて古風なミュージカル映画を作る意味とは・・・・」なんてことも頭をよぎったのだが、観ているうちに次第に笑顔になってくる。幸福感が胸に湧き上がってくる。最近の映画では、なかなかこんな直球は投げてこない。だったら今、この作品を作る意味はあるのだろう。

 更に言えば、物語の舞台を大恐慌時代に設定しているのは、「今描くべきメリー・ポピンズ」と言えるのだと思う。怒りや悲しみ、絶望、資本家からの簒奪、自立を促される子どもたち。そこに現れた彼女は「昔とまるで変わっていない」。不安の時代の人々を前にしたメリー・ポピンズの凜とした姿は、観ているだけで心落ち着く。

 

 驚いたのは、「過去の遺産」と呼ぶべき名曲の数々を一切使わず、きちんと新作で映画一本を作り上げてみせたところだった。その手を使えば容易に客を喜ばせることが出来るし、続編物はそこが優位なのに、カバー曲、アレンジ曲すらない。そこのノスタルジーに安易に寄りかからず、「新しいスタンダード」を作り上げてやろう、という気概も見事。

 エミリー・ブラントの歌唱力にも驚いたが、個人的に一番笑ったのは安定のメリル・ストリープの登場シーン。歌も上手いし動きもいいし、曲もよかった。そして前作を観ていた人にはたまらない、あのサプライズ。この時代のロンドンを舞台にされるだけで個人的には点が甘くなりがちなのだが、それにプラスして「ノスタルジー」や「泣かせ」に頼らない丁寧な仕事が大きな幸福感をもたらしてくれた。

 

 この映画、おそらく大人が観ると論理の飛躍を感じる部分はたくさんあるのだが、それでいいのだ。メリー・ポピンズは児童文学であり、理屈よりも意味、答えよりも問いかけを大切にしている。大人向けに逃げず、きちんと1作目のスピリットを引き継いだ(んだと思う。これから観ます)五歳から楽しめる続編。秀逸です。