週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『トイ・ストーリー』★★★★★

 

自分は誰のための「ホンモノ」なのか。実写では出来ない問いかけ。

 最新第4作に備えて、そろそろ見始めてみた。本当に子どもの頃に観ていた気もするのだが、細かい部分の記憶はなかった。

 改めて観賞してみると、キャラクターの造形に大成功したことによって、この世界でしか描けない、アニメである必然性のある物語が生まれていた。

 

 子ども向けのアニメ作品は尺がせいぜい90分程度に縛られることが多い(実際は子どもは面白ければ長くても観ると思うのだが)。なのでドラマを展開するのに限界があるように感じられがちだが、実際はキャラクターの説明にかかる尺が実写よりも短縮出来るので、メインの話はかなり早い段階からスタート出来たりする。

 本作も、出て5秒ぐらいでどういうキャラなのか説明出来る登場人物ばかりなので、ストーリーの薄さなどは感じられない。CGアニメとして最初期の作品で、舞台もほぼ人工物のみの屋内に限られているが、アイディアがきっちり仕込まれているので飽きは来ない。

 

 ウッディとバズの人物設定が、この作品に画期的で深みのある内容をもたらしている。本作全体のメインはバズの「自分をホンモノの宇宙ヒーローだと思っているおもちゃ」という大きな問題をどう解決するか、にあるが、この問題そのものは、現実の人間では起こりえないものに見える・・・・いや、正確に言うと起こりうるのだが、映像作品、特に子ども向けの作品で描写するのはほぼ不可能だろう。

 それを設定の妙で成り立たせ、さらにコミカルに見せ、同時に誰にとっても起こりうる深刻かつ重大な問題と繋げてみせている。つまり、人生のある時期に「自分は『ホンモノ』ではないのだ」、大人物でもなければ立派になれるわけでもない、才能があるわけでもない、「何者でも無い」と気づく瞬間は誰にでもあるわけで、それでも生き続けなければならない。

 そんなときにどうやったら乗り越えられるか、普通に描くと重たい青春物語になるか、ハードなヤマイダレものになるか、といったところだが、軽快かつ、誰でも感情移入出来る形で描いているのが見事だった。

 

 そしてそれと平行して、ウッディの悩みと解決も示されるが、こちらはシンプルでおそらく子どもも経験したことのある種類の悩み、「自分1人を愛してくれていた人が、他の人に奪われてしまう」なのはバランスの取り方として上手い。弟や妹が出来るとほとんどの人が経験する感情をこちらでは描いているおかげで、取りこぼしなくおそらく全ての人が、観ていて共感出来るさくひんになっているのだ。幼い子はウッディに、オトナはバズの気持ちが理解出来、応援出来る。

 続編はあと2本。楽しみです。