週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『アリータ:バトル・エンジェル』★★★★☆


🎥 ALITA: BATTLE ANGEL (2018) | Full Movie Trailer in HD | 720p

壮大な冒険へとこぎ出す第1章。新世代のスター・ウォーズとなるか

あらすじ

 数百年後の未来。スクラップの山の中から奇跡的に脳だけが無傷の状態で発見されたサイボーグの少女アリータは、サイバー医師のイド博士によって新たな体を与えられ、目を覚ます。しかし彼女は、自分の過去や今いる世界についてなど、一切の記憶が失われていた。やがてアリータは、自分が300年前に失われたはずの最終兵器として作られたことを知り、そんな兵器としての彼女を破壊するため、次々と凶悪な殺人サイボーグが送り込まれてくる。アリータは、あどけない少女の外見とは裏腹の驚異的な格闘スキルをもって、迫り来る敵たちを圧倒していくが……。(映画.COMより)

 最初期に映画館で予告編を見たときは「えー」の一言だった。目がでかい。ただそれだけ。原作も恥ずかしながら未読なので、特に思い入れもなく、鑑賞の予定はなかった。たぶん滑るだろう、と。ジェームズ・キャメロンロバート・ロドリゲスもそれほど好きな監督ではないので、スルーでいいかと思っていた。

 しかし、じわじわ伝わってくる評判の良さに気になってくる。大きな目も予告やポスターで繰り返し観ていると馴染んでくる。日本以外では初週興行収入一位、というのも惹かれる(日本では『翔んで埼玉』に負けた)。

 

 観賞してみると、気になるところはいくつかあるものの、徹底して詰め込まれた情報量、そして愛らしいアリータの姿に徐々に引き込まれていき、終盤では文字通り手に汗握りながらキャラクターたちを応援している状態。ロバート・ロドリゲス作品とは思えない、直球勝負の青春SF映画(の序章)だった。

 気になったのはほとんどが前半に集中している。これ、確実に大量にカットしてなんとか120分に収めている(笑)。明らかに尺が足りていないシーンが多かった。もう少しカメラが引いてからカットが切り替わるべきだったり、感情表現の演技が終わりきっていないのに次のシーンに移ったりしているところが頻発している。絶対ディレクターズカット版か、エクステンデッドエディションが出ると思う。

 

 クリストフ・ヴァルツのような演達者がこんな半端なところで芝居を終えているわけがない、というポイントで強制的に次に進んだりしているので、なかなかメインキャラたちに感情移入がしきれないのだ。「しきれない」というのは、「できない」というほど完成度が低いわけではないという意味。何もかもがよく出来ているので気持ちよく共感できそう・・・・になった途端に置いていかれる。

 また、単純に「やらないといけないこと」と、それに伴うシーン数が多すぎるのも気になる。「これだけの設定は消化しなきゃ!」という焦りがあるかのように、回想シーンや説明セリフが頻発するのは少々引っかかった。とはいえ、それらも非常に上手く処理されているので、許容出来ない、あるいは退屈するということはない。

 

 そう、何もかも「ギリギリセーフ」ぐらいのところをすり抜けていく感じなのだ。膨大な説明も、置いてけぼり寸前のハイスピード展開も、完全に理解不能になるちょっとだけ前、なんとかみんなついていけるラインで構成出来ているので、赤信号寸前でなんとかとどまれている。

 登場人物の内面描写の薄さも(これはロバート・ロドリゲス監督の癖なのだと思うが)終始気になったとはいえ、ド直球の青春物として作り上げたこと、勢いのまま走り続ける展開によってこれも最終的には気にならなくなる。また、クリストフ・ヴァルツをキャスティングしているのがここで上手く作用していて、彼がいるだけで圧倒的存在感と安心感を発揮しており、他の若いキャストやCGの軽さと巧みにバランスを取っている(今のスター・ウォーズに足りないのはこの安心感だろう)。

 

 世界観の作り込みは言わずもがな。広大な未来のスラム街の光景と共に、どうやって撮影しているのかさっぱりわからないシーンが頻発する。主人公が自分の真実を探す、というプロットも手伝って、新世代の『スター・ウォーズ』になりうる厚みのある物語だと感じた。主人公が圧倒的な身体能力を生かしてレースに挑んで自由を勝ち取ろうとする、というプロットからすると、実際に意識しているかも知れない。

 ただ、単に趣味的なSFに堕することなく、メインプロットは「異性との出逢い・自分の限界への挑戦・スポーツへのトライ・友との出会い・両親との対立」など、あくまで青春物の王道から逃げていないのも、間口を広げている理由だろう。

 

 ラストシーンの「あの人」からしても、未だ全く明かされていない世界観からしても、次回作以降を意識しているのは明らか。なのだが、この1作目でも充分に完結していて満足感もバッチリなので、気にせず観て欲しい。

 さらなる広がりを見せる「2」はさらに面白くなるかも知れない。期待を込めて。