週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ターミネーター:新起動/ジェニシス』★★★★☆

 

「非常に金の掛かったよく出来た二次創作」、でも普通に面白い

あらすじ

ジョン・コナーは若き頃の母サラ・コナーを守るため、カイル・リースを1984年に送り込む。しかし予想外の事態によって過去は書き換えられ、人類の未来も大きく変わろうとしていた。そして今、カイルはサラと“守護者”と共に世界を救うため新たな戦いに挑む。(amazonより)

 ターミネーターシリーズは世評の高い1作目と2作目のみ観賞済み。本作は予告編がなんとなく格好良かったので、以前から気になっていた。Amazon Prime会員になったのがきっかけで、観賞。

 ほぼほぼ想像通り、『ターミネーターシリーズ最新作』それ以上でも以下でもないが、SF作品としては充分面白い作品だった。

 

 今回はシュワルツェネッガー演じるT-800が大々的に登場するということもあり、彼自身の加齢をどう説明づけるのか、という問題、更に、今あえて新作を創る意義、新しさをどこに見いだすか、という部分が制作に当たっての課題だったろうと思う。

 筆者は上記の通り、シリーズの熱心なファンではないので、シリーズとしてどうか、という観点で満足も不満もない。客観的に言って、1,2作目を踏まえた最新作としては悪くない内容だろうと思う。特に冒頭の1984年のシーンは、ファンにとってはたまらないものがあっただろう。

 

 ただ、「ファンにとっては」という条件がかなりついてくるのは気になった。逆に言うと、初見の人はほとんどの場面がどう面白いのか、意味がわからないに違いない。本作には様々などんでん返し、意外性、驚き、逆転が組み込まれているが、そのほとんどが、1,2作目をしっかり観て覚えていることを前提にしているからだ。

 特に、冒頭20分ほどの展開は、多くの場面が「普通ならこうなる」という展開を破壊するように想定外の出来事が頻発するのだが、それは、時空操作SFとして、過去作の出来事がすでに起きた上で、それを起こらないようにするために手を打った結果起きた出来事になっている。「なるほどそうきましたか」という面白さはあるのだが、それはどんでん返しとは別種のものだ。

 

 どんでん返しというのは、普通の観客が常識でこうなるだろうと想像していたのと全く違う出来事が起きて、しかもそれが巧みに機能して物語を前進させる場合を指すだろうが、本作の場合はその前提が『ターミネーター』という、そもそも意外性に満ちあふれた作品であるため、「意外性ある展開を更に意外な形で裏切る」という構造になっており、正直言って、わかりづらい。

 物語中盤に発生するショッキングな出来事も、このショッキングさが最も機能するのは、本シリーズが大好きな観客に対してだろう。それ以外の人にとっては、「まあ冒頭のシーンであんなことがあったんだから、こうなることもありうるよね」というぐらいじゃないだろうか。

 そもそも、シリーズファンだけが喜ぶ「まさかあの人物が・・・・!」というのを、SFのメインアイディアに据えるのはいかがなものかと思う(あと正直、その人物をそういう状態にする必然性は、物語上あまり感じられなかった。人間を●●●●●●●にする、という新アイディアなら、もっと奥行きを創れたと思うのだが・・・・それは次作以降でやるつもりだったのだろうか?)。

 

「よく出来た二次創作」という印象はこのあたりから感じられたもので、たとえるならシリーズの熱心なファン同士が話し合った「俺が考える最強のターミネーター最新作」みたいな感じなのだ。「もしもこうなったら面白くね?」「アレがこうなってさ」と盛り上がるのだが、その素材は全て、シリーズで過去にやったことを膨らませた以上でも以下でもない。新味はどこにも足されていない。応用しているだけだ。

 その点、シリーズを明らかに前進させた『クリード』とは、どちらもある種の二次創作(原作者が脚本を書いていない)とはいえ、相当な差がある。過去作から新味がないという点では『スター・ウォーズ フォースの覚醒』に近いが、あの作品よりはアイディアがよく練られている。

 

 そう、二次創作だけれど、決して悪くない二次創作である。アクションシーンも派手だし、CGの出来もいい。サラ・コナー役のエミリア・クラークの芝居は秀逸。残念なのは、肝心のシュワルツェネッガーの演技が今ひとつ精彩に欠けるところだろうか。

 続編やる気満々の終わり方をしたが、この方向の続編はもう創らないらしく、また改めて新作を、ジェイムズ・キャメロンがちゃんと関わって創るらしい。まあ、タイムスリップものなので、複数の世界線を公式で創るのもたぶん、悪くはないだろう。たぶん。あえて人には勧めないが、個人的には充分楽しめる作品だった。