『マグニフィセント・セブン』★★★★★
マグニフィセント・セブン [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 発売日: 2017/12/06
- メディア: Blu-ray
- この商品を含むブログ (2件) を見る
単なるスター勢揃いリメイクではない、「死に方」を描く快作
あらすじ
冷酷非道な悪漢ボーグ(ピーター・サースガード)に支配された町で、彼に家族を殺されたエマ(ヘイリー・ベネット)は、賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)、ギャンブラーのファラデー(クリス・プラット)など荒れ果てた大地にやってきた<ワケありのアウトロー7人>を雇って正義のための復讐を依頼する。
最初は小遣い稼ぎのために集められたプロフェッショナルな即席集団だったが、圧倒的な人数と武器を誇る敵を前に一歩もひるむことなく拳銃、斧、ナイフ、弓矢などそれぞれの武器を手に命がけの戦いに挑んでいく――(Amazonより)
名作『荒野の七人』のリメイク。劇場で作品の存在を知ったときは、「えー、なんで今さら・・・・」と懐疑的だった。キャストは豪華で、監督は『イコライザー』のアントワーン・フークアとはいえ、いかにも「豪華キャストを人種に配慮してたくさん配置しつつ確実に面白いお話で手堅くまとめられそうな話」として選ばれそうな題材なので(笑)、劇場では見送っていた。
しかし、妙に評判がよかったので気になり、ようやく観賞。原作の比較的明るい雰囲気とは真逆の、重く、深刻な雰囲気に当初は困惑していたのだが、最終決戦に至って、彼らの死に場所を巡る物語だったのだと深く感銘を受けた。ちなみに、『荒野の七人』も『七人の侍』も観賞済みだが、どちらも意外と印象が薄い。観ているときは割りと楽しかった記憶が在るのだが。なので、原作のストーリーはうろ覚えである。
まず、各キャラクターがカッコイイ。とにかくカッコイイ。デンゼル・ワシントンが黙って立っているだけで美しく、クリス・プラットも脂ののりきった演技を見せている。どの人物も出てくる瞬間にキャラを立てていく秀逸ぶり。
画面は、往年の西部劇とは対照的に非常に重くて暗い。『許されざる者』なんかもこんな雰囲気だった記憶が在るが、とにかくここまで笑顔が少ない西部劇は観ていても辛い気持ちに襲われる。大体、ウェスタンは生きているだけでしんどいような時代を舞台にしているので、登場人物たちはあえて陽気に振る舞うことが多い。しかし本作では、冒頭から辛いシーンの連発で、たとえ笑う瞬間があってもそれは、皮肉と悲しみを含んだ笑顔がほとんどである。
なので途中までは「いまいちか」と微妙な気持ちで居た。なにせ、あの人気のテーマ曲も登場せず、最近の映画音楽らしい重低音を強調した音が連続する。しかも暗い雰囲気の中で、集まってくる「七人」は、擁護しがたいレベルの悪人として登場する。状況からして笑い飛ばすことも出来ず、ほんとうに危険な人物にしか見えない。
おかげで「ちょっとこの深刻にすればいいみたいなリメイクはどうかと・・・・」と途中までは思っていたのだが、半分過ぎたあたりで、セリフの形で明確に物語の主題が登場してくる。「人はどうやって死ぬか選ぶ権利がある」ということである(この言い方ではなかったかも知れないけれど)。
繰り返し登場する村で唯一の教会、十字架、そしてそれを破壊し蹂躙する悪、神を鼻で笑う者たち。しかしそれを繰り返すほどに、次第にその荘厳な存在感が前面にせり出してくる。彼らは死を目前にしたギリギリの人生で、常にそうした存在を意識せざるを得ない。「自分はいかに生きるべきか=死ぬべきか」が常に問いかけられている。
この時代だからこそ成り立つとも言える、余りにも無情な悪役。信念、正義、善をせせら笑う彼に立ち向かう、というチャンスを得た彼らが、それまでの悪党そのものといった人生から少しずつ、明確ではなくとも決断していく。その描写はわかりやすくはないが、各人物の表情や立ち居振る舞いから充分に伝わる。
そして最後の闘い。まさしく死闘と呼ぶべきこの戦は、誰が生き延び誰が死ぬのか、本気でわからない。西部劇と言うよりもはや戦争映画である。この、現代では珍しい、続編を創ろうなどという欲っけのなさが、尋常ではない緊張感を与えてくれる。この闘いの中でも彼らは、意義のある死に場所を求めて駆け続ける。
安直な救いや希望を越えた、ビターな生き様=死に様を描ききった本作は、リメイクというより、同じ題材を使った全く異なる作品と呼んだほうがいいだろう。最後の最後の「アレ」も含めて、想像外の佳作だった。オススメです。