週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』★★★☆☆

 

オジサンの夢とが詰まった、陽気で愉快でノンストレスな秀作メシ映画

あらすじ

一流レストランの料理人カール・キャスパーはオーナーと衝突。創造性に欠ける料理を作ることを拒み、店を辞めてしまう。マイアミに行ったカールは、とてもおいしいキューバサンドイッチと出会い、元妻や友人、息子らとフードトラックでサンドイッチの移動販売を始めることにする。(amazonより)

 『アイアンマン』の監督&出演者として知られるジョン・ファヴローによる小品。芸術的な作品を目指してはおらず、あくまで陽気なエンタメに徹し、イヤな人物はほぼ出てこない。演出も小気味よく、気分よく観られる良作なのは間違いない。ロバート・ダウニーJrやスカーレット・ヨハンソンなど、アイアンマン周りのキャストも登場。

 

 アマゾンでの評価もすこぶるよく、実際観てみても良作なのは間違いない、というか特段不満をぶつけるような箇所はない作品なのだが、どうにもひっかかるところは残った。出てくるキューバサンドは実に美味そう、息子の子役はかわいくて芝居は上手い、スタイル抜群のラテン系美女の元奥さんとはつかず離れずの距離感、勤めるレストランの美人ウェイトレスとはちょっとした恋仲、部下たちは自分をすこぶる慕ってくれる、料理の腕は抜群・・・・。

 主人公に感情移入出来るか、乗っかれるかに全ては掛かってくるだろう。前半部分では筆者も、上司の方針と自分のやりたいことの間で板場祭に合う主人公の悩みに共感しながら観ていられたのだが、あっという間にそんな悩みを吹っ飛ばす、愉快なロードムービーへと転換する。まるで中年男性には夢と希望しかないような明るい物語。

 

 もちろん暗くしたり悩みを持続させればいい映画になる、などというつもりはさらさらない。ただ、それではこの物語は何を描いているのだろう。親子の関係性なのか、作り手と批評家の関係性なのか、ものを創るときに何のために作り上げるべきかという問題なのか。どうにもしっくりくるところを見つけ出すことが、筆者は出来なかった。

 そう、作中でも登場する問いかけと重なってくるのかも知れない。保守的か先鋭的か、旧弊か斬新か、客のためか自分のためか。そんな二項対立に囚われすぎてわけがわからなくなってしまったなら、旅に出るべきなのかも知れない。つまるところ、どうのこうの言ってないで「美味しい料理」を創るべき、ということなのだろう。

 

 そういう意味で言えば、本作は「美味しい映画」だと思う。気分よく観られ、暖かく劇場から帰れる佳作なのだが。だがしかし。現実のうんざりするような気分を一掃してくれる、明るい物語なのだが。だがしかし。どうも引っかかりが残る。いや、正確に言えば、「引っかかりが足りない」のかもしれない。

 気分よく「めでたしめでたし」を味わうためには、主人公にもう少し、山を乗り越えて欲しかったように思う。劇中の料理同様、小気味よいスパイスが欲しかったのだ。