週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『キャスト・アウェイ』★★★★☆

 

あらゆるものにまとわりつかれた人間が全てを失ったとき、辿り着いた場所とは

あらすじ

チャック・ノーランドは、世界宅配便“フェデックス”の敏腕システム・エンジニア。世界中を駆け回り、システム上の問題解決に明け暮れている。一秒も無駄にしないことが彼の信条だった。そんなある日、彼の乗った飛行機が事故を起こす。奇跡的に一命を取り留めたものの、彼が漂流した先は無人島だった。まったく孤立無援の環境に投げ出されたうえ、日常の便宜から切り離され、チャックは生きるために必要な水と食料、寝る場所の確保の問題に直面する。(amazonより・一部編集)

 大好きなロバート・ゼメキス監督作品ながら、約2時間半と長尺なのでなかなか観られず、ようやく観賞。監督得意の寓話性と、難しいことを簡単にせず、逃げを打たずにそのままのかたちで届けてくれる語り口が心地よい物語だった。

 

 なぜ主人公をフェデックスのエンジニアに設定したのか初めのうち、非常に不可解だったのだが、世界中を飛び回るということ、「時間」を無駄にせず仕事を行うという主人公の哲学、運ばれている荷物を使った物語上のギミック、などなど重層的な意味合いを持たせるために不可欠な設定だった。

 また、この映画で有名な「ウィルソン」だが、無人島で一人きりの主人公に会話をさせて映画の進行を円滑にしつつ、ドラマに厚みをくわえることにも成功している。こうした、見事なアイディアがシンプルな作品を唯一無二のものにしているのだ。

 

 この物語から得られるメッセージは終盤、主人公の言葉で明瞭に語られているが、全てを失った人間がただひとつ、手元に残った真実とは何だったのか。2時間半という尺でありながら、無駄をそぎ落とした作品全体がシンプルに描き出している。表情から立ち居振る舞いまで、冒頭とはまるで別人のような演技を見せるトム・ハンクスが圧巻。