『12モンキーズ』★★★☆☆
難解なギリアム映画、筋よりも意味の厚みを楽しむべきか
あらすじ
いつも同じ夢だった―空港を駆け抜ける男。膝から崩れ落ちる男。とり乱す女。それを見つめる少年…。 21世紀初頭、全世界に蔓延したウイルスによって、人類は絶滅の危機に瀕していた。生き残った人々は地上を追われ、地下での生活を余儀なくされた。 2035 年、科学者グループは原因を探るために調査を重ね、その謎に“12モンキーズ”が関わっていることをつきとめる。囚人ジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)は、特赦を条件に“12モンキーズ”の調査を命じられ、ウイルスが蔓延しはじめた1996年に送りこまれるのだが…。ウイルス発生の鍵を握る“12 モンキーズ”とは一体何か?知られざる化学兵器か?秘密の軍隊か?それとも…?そして、人類の行く末は…。(amazonより)
テリー・ギリアム監督作品は『未来世紀ブラジル』や『ドクターパルナサスの鏡』を過去に鑑賞してきている。いずれも明瞭な意味合いやストーリーはわからないが、隠喩や引用が飛び交うところ、独特の色彩感覚や画面の構成、登場人物の異常だが憎めない非力な存在感が好みでつい観てしまう。
本作もどんなストーリーなのか説明するのは・・・・説明そのものはできなくはないが、言ったところで面白さは伝わってこないだろう。一応タイムトラベルものなのだが、面白いのは鑑賞者側も、果たして本当にタイムトラベルをしているのかだんだん疑わしく感じられてくる、という点である。
いつものギリアム映画らしく不条理で不可解な世界観描写の後、1990年の精神病院でのシーン。周囲の患者たちと主人公の言っていることは、同じくらい狂っている。誰が真実を語っているのか、誰を信じていいのかは観ていてもなかなか掴みきれない。
実のところ、ここがこの映画を見辛くもしてしまっているのが残念ではある。わかりやすく説明してあげようという気はさらさらないので、ひっくり返しや騙し、どんでん返しは追いつけなくなった時点でおしまいである。ただでさえ出てくる人が真実か嘘かわからないことを喋りまくっているので、どこを観ていても混乱する。筋道立ったSFサスペンスが見たい人は脱落していくだろう。
しかし、不条理な世界に放り込まれた心優しい人々が、懸命に生きようとするもうまくいかない様は独特の悲しみを誘う。他にない視点からもがき苦しむ人を描く良作。そんなにアクションしてないブルース・ウィリスの悲しげな眼差しも良いです。