『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』★★★☆☆
想像よりもずっとちゃんとした、意外なほど整った脚本の良作
あらすじ
南太平洋で遭難した兄の弥太を探すため、良太はヤーレン号というヨットで出航した。良太には学生の市野、仁田、吉村が同行したが、出航後一カ月目に大嵐にあい、ヨットは転覆し、四人は海上に投げ出されてしまった。その時、良太は海中から現われた巨大な鋏を目撃したが、気を失ってしまった。(映画.comより)
アマゾンプライム会員特典でゴジラシリーズが全て観られるようになっていたので、これは全て見るのがファンの義務だろう、とこれから一ヶ月ほどのトライを決めた。30本近くあるので1日1本ペースで見続けないといけないが。
いきなり、これまで一度も興味を持ったことのなかった作品を選択。エビラの存在は知っていたものの、微妙な時期の微妙な題材のゴジラで、しかも南海の孤島を舞台にしているタイプの特撮は個人的に好きではない(町のミニチュアの中で暴れまわってナンボだろう、と思っているため)。
というわけでろくに期待せずに見始めたのだが、意外や意外、結構ちゃんとした作りの冒険娯楽映画だった。エビラも安直なネーミングの割に造形もよくできていて、南海の孤島に潜む化け物、というキングコング的存在としてはなかなか恐怖感があった。
ストーリーはテンポがいいながらも細かく設定されていて、メイン主人公の「兄を探したい」という動機を縦軸に、泥棒や大学生、インファント島の女性らの思惑が交錯しつつ謎の組織の活動が暴かれていき、そんな中で大怪獣の戦いが始まる。
『キャスト・アウェイ』的な島からの脱出要素、007的な悪の組織との戦い要素もあり(この組織が何をやりたかったのかは正直よくわからなかったが、「赤イ竹」という名前からして共産系のイメージなのだろう)、90分程度の尺の中で無駄なく話が展開されていく。
怪獣の戦い自体はやや短い。エビラは海から出てこれないし、モスラは島民の願いが届かないと働いてくれないので致し方ないのかもしれない(後は予算の都合)。当時の流行要素をゴジラがちょっとやるサービスカットも数カ所挟まり、今から見ると苦笑する部分も。インファント島の強制連行されてきた島民たちがあっけなく日本語を話し出すのは笑ったが、007の『死ぬのは奴らだ』よりはよっぽど真面目に島の雰囲気を演出していたように思う。
別に恋愛要素があるわけでもなく、メッセージ性があるわけでもないザ・娯楽映画だが、ダラダラしたありがち展開も使わず、最短ルートでお客を楽しませる職人芸を見た気分。