週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』★★☆☆☆

 

要素を盛り込みすぎた結果、焦点がぼけてしまった惜しまれる一作

あらすじ

 ゴジラを倒して半世紀が経とうとした頃、一隻の原子力潜水艦が巨大な生物と遭遇し、消息を絶つ。防衛軍はこれをゴジラであると推察、その出現を警戒する。その頃、日本各地で次々と怪事件が勃発、調査に向かった報道陣は謎の老人に遭遇し、“護国三聖獣”の存在を知らされる。ついにゴジラが日本に上陸。それに呼応するかのように聖獣たちも目を覚ますのであった。(ゴジラストアより)

 引き続きゴジラ視聴。ゴジラファンの知人から、近年の作品中ではオススメの一作、と聞かされていて楽しみにしていた。監督も平成ガメラシリーズの金子監督ということも期待の一因。

 観てみて悪くはなかったのだが‥‥物足りないところが楽しめたところを上回ってしまい、結果的にもう一つな印象に。

 

 予算がない時期のゴジラであることは重々承知しているので、怪獣の造形がどうにも安い感じなのは目をつぶる。子供の頃テレビで見ていた、平成になってからのウルトラマンシリーズぐらいの特撮に外観が近いので、映画館で見たらさぞ食い足りない印象だったろうと思うが、これはもう仕方ない。ミニチュア周りの迫力はなかなかのものだったので、総合的にはそこまで悪くはないとも言える。

 また、2001年の日本映画なので、CGにできることにもかなり限界があり、この辺りも冷めがちだが、厳しい中でも上手くごまかせる範囲にしか使っていないので、これもそこまでマイナスにはなっていない。そんな状況で4体もの怪獣を登場させるというサービス精神で、量で押し切ってくれるのは思いの外に嬉しいところ。

 

 また、平成ガメラの監督らしく(これが監督の趣味なのか周囲からの要望なのかはよくわからないが)、オカルト要素を投入しているのも、新機軸として悪くなかった。モスラキングギドラ・バラゴンをあえて日本神話らしい文脈に流し込んで、近代の執念・ゴジラと古代からの守護者・三怪獣を対置したことで、怪獣映画にしばしばおこる「なんのために戦っているのかよくわからん」状態を回避できているのも上手かった。

 さらに、怪獣たちに翻弄されるごく普通の人々の描写は、やはり平成ガメラ同様見事だった。篠原ともえ演じる「若者A」の人生初め、些細な描写から「怪獣によって破壊される日常」を演出するのは、金子監督ならではのテクニックだろう。

 

 では、何が不満だったのか。明確に食い足りなかったのはメインを張っている俳優陣の芝居。脇のどうでもいい一般人は気にならないが、ぞろぞろ登場するメインキャラたちが(尺が足りていないこともあるが)どうにも描写に厚みがなく、演技力も相まって感情移入するに足る人物に仕上がっていない。

 どうしてそこまで、怪獣に肩入れするのか、という裏付けがこの種の作品の場合不可欠なのだが、「B級オカルト番組の記者だけどとても真面目な報道への思いがあり、精神感応能力が高く、かつ父親が防衛軍の准将」というヒロイン像は、演じきるのが難しすぎる過積載設定で、どういう人なのかいまひとつ掴めない。彼女を囲む周囲の人間たちも、テンプレ的な面白キャラの方が目立つ。この辺り、平成ガメラの脚本を担当した伊藤和典の巧みさには全く届いていなかった。

 

 さらに、ただでさえ短い尺の中で大量の怪獣を出し、大量の設定を出しているため、全く消化しきれていないのも残念。ガメラは3作品使ってゆっくりと展開しており、またアトランティス文明といういたってシンプルな説明一本で走りきっているので判り良いのだが、それよりもややこしい説明をそれよりも短い期間で描き切って面白がらせるのは無理があった。

 そのほか、致命的にダメなところは少ないのだが、いまいちな部分が大量に重なっていった挙句、物足りなさの方が満足感を上回ってしまうという実に惜しい作品。ラストバトルが歯切れ悪くだらだらと続くのもよろしくない。結果、どうにも物足りない一作に。