週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『プロメア』★★★★★


映画『プロメア』ロングPV 制作:TRIGGER  5月24日〈金〉全国公開

頭から終わりまで「最終回」の連打。おバカが作ったに違いない(褒め言葉)

あらすじ

 突然変異で誕生した炎を操る人種「バーニッシュ」の出現をきっかけに、未曾有の大惨事である「世界大炎上」が起こり、世界の半分が焼失した。それから30年後、一部の攻撃的なバーニッシュが「マッドバーニッシュ」を名乗り、再び世界を危機に陥れる。これにより、対バーニッシュ用の高機動救命消防隊「バーニングレスキュー」の新人隊員ガロと、マッドバーニッシュのリーダー、リオという、それぞれ信念を持った熱い2人の男がぶつかり合うことになる。(映画.comより)

 

 テレビアニメを最後まで鑑賞しきれることがなかなかない。面白くても尺が長すぎて、途中でダレてしまうのだ。12話なり24話なり鑑賞しきった時の興奮は他に代え難いものがあるのだが、なかなか習慣づけられるほど最後まで興味を持続できない。これは自分の集中力のなさが原因だし、だからこそ2時間で済む映画ばかり見ているのだが。

 そんな人に朗報である。このオリジナルアニメ映画はちゃんと冒頭からお話が始まるにも関わらず、2時間ずっと「最終回」が描かれ続けている。説明し難いが、本当に始まってすぐに「最終回的状態」になり、それからラストシーンまでとにかくずっと「最終回状態」である。

「あーいい最終回だった」というあの感情だけを味わいたい、なんてわがままな欲望を叶えてくれる、極めて特殊な作品といえる。

 

 先に書いたようにすごく特殊な作品なので、いわゆる「ちゃんとした」シナリオ、「ちゃんとした」ドラマ、「ちゃんとした」人間感情を味わいたい、という方には一切オススメしない。ちゃんとしてないからである(笑)。

 ストーリーは過去の熱血アニメ、ロボットもの、ヒーローもの、戦隊モノなどなどありとあらゆるジャンルからの引用が相次いでいる。この辺りは『キルラキル』と同様。したがって、あえて「引用ですよ」というシグナルもなく突然何かを元ネタにしたシーンや展開、あるいは「あるある」が連発されるので、そういうのが全くわからない、という人には鬼門かもしれない。

 

 冒頭から5分ほどでテンポよく設定が見せられ、「もういい? わかったね? じゃあ始めます」と言わんばかりにあっという間に怒涛の激アツ展開に突入。そのあとは、満足にキャラクターの説明もなく、「見りゃだいたいわかんだろ?」といった勢いのまま最後まで駆け抜ける。

 この「だいたいわかる」の加減が本当にギリギリで、人によっては置いてけぼりにされることもあるだろう。筆者も中盤、若干置いてかれている感(他人事感)があった。感情移入できない状態で熱血物語を展開されるとそうなりがちなのだ。

 

 しかし、これは本当に画期的な感覚だったのだが、置いてけぼりも加速していくと一周回ってやっぱりわかるような感覚になる(笑)。ものすごい勢いで先に行かれてしまうのだが、それでもやっぱり物語を見続けていると愛着が湧いてきて、結局感情移入してしまうのだ。

 また、勢い任せのギャグも(『キルラキル』ほどではなかったが)要所要所に入れ込まれていて笑わせてくれる。そんな中であまりに「最終回っぽい激アツ展開」が乱舞するので、だんだんいま、映画の何割ぐらいか、何分くらい経ったのかがわからなくなってくる。

 

 だいたい映画を見ていると、展開から言っておそらく三分の一ぐらいだろう、半分ぐらいだろうという見当がつくのだが、本作についてはそれができない。もう今度こそ最後、ラスト展開か、と思い始めてからが本番、という作品だからだ。

 ちなみに、メッセージがどうとか、考えさせられるとか、そういうのとも無縁な内容なので、そこも予めご了承願いたいところ。『マッドマックス』などもそうだが、意味を破壊していった先に残る高揚感を描く作品というのもこの世にはあっていいと思うのだ。

 正直言えばもっとゆっくり、2クールぐらいかけて観たかった、という気持ちもなくはない。でもそうなると、『キルラキル』とやることは変わらなくなってしまうだろう。2時間で最速加熱、どこまで熱くできるか挑戦して、純度を極限まで高めて精錬した作品といえるだろう。

 

 ちなみに、芸能人キャストの松山ケンイチ早乙女太一堺雅人の演技は素晴らしいの一言。実力ある声優陣の演技の中でも全く浮いていない。絶叫が多い、アニメ以外では表現されない感情が飛び交う内容にも関わらず、最後まで見事に演じきっていた。

 特に堺雅人の芝居は、これまでアニメで聞いたこともないような幅の広さでまさに脱帽。もっと堺雅人出てこないかな、と思わせてくれた。イチオシ。