『ゴジラの逆襲』★☆☆☆☆
突貫工事で作り上げられた凡庸の極み
あらすじ
再び現れたゴジラは、新たな巨大怪獣・アンギラスと格闘しつつ海中へ。政府はゴジラの本土上陸を阻止せんとするが、脱走した囚人の起こした火災がゴジラとアンギラスを大阪に誘導してしまう。(amazonより)
好きなゴジラ映画でこんなことは書きたくはないが、本当なのだからどうしようもない。見出しの通りの感想である。
確か、第1作のゴジラの大ヒットを受けて5ヵ月で作り上げられた、という話。現代劇ならともかく、特撮を含む映画を5ヵ月で作るのは正気の沙汰ではないと思うが、ともかくやり遂げたわけだ。そして、その通りのクオリティに仕上がっている。
脚本自体は支離滅裂ではないが、しかし面白みは全く無い。特撮が入らない分の間を埋めるために、面白くもなんともない一般人の会話が延々引き延ばされている。その内容は特に、ゴジラの抱えている問題と関係はない、ごく普通の(それもこれといって奥行きもない)色恋沙汰である。
第1作のようにゴジラという存在そのものと複雑に関わってくるような人間ドラマの展開はなく、特徴も無く、意外性もなく、ただただ普通のセリフを喋っているだけ。無理やりゴジラと闘う理由を作ろうとしている様子だが、ごく普通の漁業会社の飛行機操縦士がゴジラに決死の覚悟で立ち向かうまでの強い関心を抱くのはさすがに無理がある。
一方で肝心要の特撮のほうも、非常に厳しい。新怪獣アンギラスの登場はさすがにテンションが上がったが、シリーズでもトップクラスに地味で特徴の薄い怪獣なので、戦い方もまさしく「プロレス」であって観ていてもあんまり面白くない。さらに、どうもフィルムの回転数を間違えたらしく、普通の人間のとっくみあい以上に動きがちまちましている。これが妙な味(怪獣の異常性)を与えてはいるのだが、褒める気にはなれない。
唯一よかったのは大阪の巨大セットで、これはなかなか見応えがあった。でも魅力と呼べるのはここぐらいだろう。ゴジラの顔のアップも、1作目よりも表情があるのは悪くない。
さらに。音楽が伊福部昭ではないので、あのゴジラのテーマは流れない。それはまあよいのだが、今回の音楽が実に地味で、ほとんど流れない。
その結果として妙に記録フィルムじみた雰囲気はあって迫力に若干繋がってはいるが、でも映画としてみるとやはりマイナスだろう。ワクワクもドキドキもない。やたら暗い重低音が鳴り続けているだけだと、これもまた異様さの演出には繋がるが、解決や解消が無いのでもやもやするばかりである。
そしてゴジラの倒し方は現場での思いつき。計画性などまるでない。
その他、登場人物も少なくロケもほとんど無く、予算も時間も無かったことが画面の広がりのなさからも窺える。当時の事情は大いに理解出来るが、とはいえ、今さら観るのは筆者のように、全作品観ようと覚悟を固めた人間だけで充分だろう。