週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『仁義なき戦い』★★★★☆

仁義なき戦い

仁義なき戦い

 

 戦後の動乱期のヤクザ者の生き様を活写&広島弁の快楽

 

あらすじ

終戦直後の呉。広能昌三は復員後、遊び人の群れに身を投じていたが、山守組々長・山守義雄はその度胸と気風の良さに感心し、広能を身内にした。まだ小勢力だった山守組は、土居組との抗争に全力を注ぐのだった。その土居組を破門された若頭・若杉が、山守組に加入。若杉による土居殺害計画が進む・・・。(amazonより)

 

 ヤクザ映画はあまり観てきておらず、せいぜい『アウトレイジ』ぐらいのもの。名作と名高い本作をようやく観て、ああ、こっちが元ネタか、と納得いった。あの有名なテーマ曲も、この作品のものだとはちゃんと認識していなかった。恥ずかしい。

 まず冒頭の呉の描写を観て、『この世界の片隅に』の数ヶ月後にはこんなことが同じ場所で起きていたのか・・・・となんとも言えない気持ちに(笑)。まあどちらも現実だろう。闇市の大きなオープンセットに、結構金の掛かった映画だと驚く。

 

 ストーリーの軸自体は非常にシンプルで、「誠実な主人公が、老獪あるいは愚かな人々の政治抗争に巻き込まれ翻弄され、最後まで誠実に孤独に去って行く」という類型。政治的な要素が含まれている作品だと、よほどひねったもの(主人公がトリックスターとか)でなければこういうストーリーになるだろう。

 菅原文太演じる主人公の終始寂しげな表情が魅力的で、その分、周囲の金と権力にまみれた人々の薄汚さが際立って面白い。個人的には田中邦衛演じるやくざの小物感が笑えてよかった。群像劇としては意外なほど複雑で、誰がどの組織に所属しているのか、それぞれがどんな関係性にあるのかはそれなりに頑張って把握しようとしなければならない。

 

アウトレイジ』は裏の世界の薄汚さ、愚かしさを(極端すぎる暴力、一見かっこうよさそうに見える主人公も含めて)笑い・嗤いの対象として描写しているが、本作ではあくまでヤクザものをかっこうよく描こうとしている(やっていること自体はわりと狭い範囲での利権争いなのだが)。

 これを身近に感じ、共感・感情移入出来るかどうかが、本作に深くのめり込めるかどうかの分水嶺になるだろう。筆者はどうしても、一歩引いて観てしまう。情にほだされてしまう人物が居る分、『アウトレイジ』より本作のほうが視線が優しいとも言えるだろう。

 それと、飛び交う広島弁は正直かなりの部分わからなかったのだが、それでも充分楽しんで観賞可能。真似したくなりますね。シリーズをこれから全部観るのが楽しみ。