週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『アス』★★★★☆


US Super Bowl Trailer (2019) Horror Movie HD

 なぜか日本版の予告が出てこない。

 『ゲット・アウト』が面白かったのと、監督の映像美が好みだったので鑑賞。期待通り面白く、2作目ということで1作目よりさらに遠くまで歩みだした物語になっていて、好みだった。

 

 1作目から感じていたが、この監督、コメディとホラーの合間を行ったり来たりする感覚がとても独特で、一方的に怖がらせ続ける作品よりも物語に厚みを持たせられていると感じる。

 日常と非日常の落差で感情を揺さぶる、という点でホラーとコメディは同様のテクニックを使っており、そのバランス感覚にも非常にセンスがいる点でも似ているので、ホラーとコメディどちらもこなせる人、というのは、映画監督、俳優、漫画家でもしばしばいるのだ。

 

 映画館に行くまでは、「家にやってきた『自分たち』との恐怖の戦い」を描く、自宅監禁系のホラーだと思い込んでいたが、いい意味で綺麗に裏切られた。主役のルピタ・ニョンゴ、またその夫役の演技が本当に秀逸。というか、メインの家族の芝居がいろんな意味ですごい。しかも終始、どこかコミカルさも湛えている。

 物語にどんな意味があるか、一体何が起きているのか、その寓意含意は1作目同様、様々な取り方があるだろう。皮肉な意味合いも大量に込められていることが、アメリカ社会の事情に通じていない自分でも想像できる。

 しかし何より本作が面白かったのは、娯楽映画の枠を飛び越えて、アート系映画のようにただ、美しい映像を追求する下りが存在したところだった。気持ちよく、おいていかれている感覚。かつて、ピンク映画という枠組みの中なら何をやっても許された時代が日本にあったと聞くが、今はホラーという枠組みなら、これだけ実験的なことをやっても許容されるのか、と興味深く感じる。

 

 ちなみに、ラストのあの展開については筆者は見ている途中で感づいていたが、個人的には劇中に明示しないほうがかっこいいのではないか、と感じた。わかる人だけわかる、というのでも十分成り立っていたと思うのだが。

 しかし、あそこまできちんと描いたから、エンタテインメントの枠内にギリギリ収まっていたのかもしれない。ラストにカタルシスがあったから、なんとか満足してもらえる、という方法でお客を納得させるのも、手の内だろう。

 ともあれ、監督の手腕は一発屋のそれではなかったようで、安心。今後もジョーダン・ピール作品はおい続けていきたい。