『ネットワーク』★★★★☆
ジョーカー元ネタシリーズ(監督が影響を受けたとインタビューで言及していた作品)として鑑賞。
物語は、長年続けてきた報道番組のキャスターが番組降板直前にストレスのあまり、「来週番組で自殺します」と宣言してしまうところから始まる大混乱を描く、テレビ番組制作の戯画。エンタテインメント業界の愚かしさをこれでもかとネタにしている。
壮絶なのはこのキャスター役のピーター・フィンチ。どんどん正気を失い、大衆に祭り上げられていく壮年男性を凄まじい演技で演じきって、死後にアカデミー主演男優賞を受賞している。彼の芝居を見るだけでも価値のある作品。
当人に全くその気がないのに崇め奉られる人、というところ、完全にジョーカーと一致している。
また、テレビ業界人が「視聴率」という本末転倒甚だしい数字のために恥も外聞もなく奔走する姿も完全に狂気の沙汰として描いており、登場するキャラクターたちは誰も彼も実在しそうなラインで笑える。
ストーリーもギリギリありえそうなところを狙いつつ、不意に一線を飛び越えて幻想の世界で終焉を迎えたりと、鑑賞側をグラグラ揺さぶってくる作りは『タクシードライバー』や『キング・オブ・コメディ』同様。
ただ、1点非常に残念だったのは、古い映画特有の中途半端な恋愛要素を、それも妙に肯定的に織り込んでいる(マスコミを嗤うネタとしてではなく)というところで、時代的問題もあるとはいえなんとかできなかったのか。ということで★1つ減点。でも名作ですよ。