『ジョン・ウィック パラベラム』★★★★☆
シリーズのファンなので鑑賞。とはいえ1、2作めはネットフリックスで見たが。
相変わらず魅力的なキアヌ・リーブスのスーツ姿と、独特のアクションを楽しむ大作。規模的にも今回はすっかり大作になった。
ハル・ベリーの立ち位置が意外とあっさりしているのも(ザ・ゲスト出演、という感じ)驚いたが、その分凄まじいアクションを自分でこなしているので満足。というか、キアヌが全部自分でやっちゃうので、別にアクション俳優ではない彼女も同じようにやらねばならず大変だっただろう。
ストーリーも前作から確実に動いてはおり、シーンごとのアイディアの豊富さも抜群。どうやって撮っているのかさっぱりわからないバイクシーンや馬シーンは目をまん丸にして鑑賞していた。
一方、ストーリーの方は少々錯綜し始めたと言わざるを得ない。過去作の動機と行動が一直線に結びついたシンプルな構図から、今回は今行われていることがなぜ行われているのかなかなかわかりづらい。「平穏→激怒→復讐」の構図はさすがに3回も繰り返せないから仕方ないが。
ただでさえ背景がはっきりしない殺し屋ワールドのルールを前提にした物語なので、「え? なんで?」と思う部分は少なからずある。「こういうもんなので」と言われてしまえばそれまでなのだが、やはり今までがわかりやすいお話だっただけに、「今どうしてジョン・ウィックは戦っているのだろう」と疑問を抱くのは残念だった。
特にハル・ベリーのパートは、戦闘の理由に釈然としないものを抱いた。そもそも彼女との繋がりも劇中では明かされず、怒りの理由も反射的なものなので共感しづらい。
あと、本作では「偉い人」がたくさん出てくるのだが、偉い人がどれぐらい偉いのかが世界観を説明してくれないのでわからず、この人は殺してもいい人なのかダメな人なのか、よくわからないまま死んだり死ななかったり殺しちゃったりするので、その部分も混乱する。
まあ、そもそも説明する気がないからだとは思うが。何もわからず、この世界観に溺れるだけで満足すべき映画なのだろう。
それと、例の登場人物についてだが、どうして日本人を配役できなかったのだろう(笑)。 あの人は「日本文化に憧れているアジアのどこかの国の人」的な設定なのだろうか。だとしたらなかなか痛々しくて面白いが。
この調子だと、劇中のモロッコとかの描写もこのレベルなのだろうとは思うが、せっかく多国籍感を出すのが昨今のムーブメントなのに、肝心の考証が不足していると失笑を買うだけである。勿体無くないか。次回作も見ますけども。