『ピエロがお前を嘲笑う』★★★☆☆
TSUTAYAで以前からサスペンスの棚で推されていたので気になっており鑑賞。一応ネタバレ注意タイプの作品なので、ネタバレ有無を分けて感想を書く。
ネタバレなしで言うと、まあ、暇なときに見るくらいならあり、と言った感じ。いろんな作品の要素が目白押しになっているのでサスペンス好きなら退屈しないだろう。尺もさほど長くなく、テンポも良い。
だが、取り立ててプッシュするほどではない。間違ってもガチンコのサイバークライムものを期待するとがっかりするだろう。
以下、ネタバレあり。
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どこかの推薦文で、映画ファンほど騙される、と言う言葉を見かけた気がするが、確かに。『ユージュアル・サスペクツ』『ファイトクラブ』『真実の行方』を足して、サイバークライムサスペンス風味を加えて三で割った感じ。主役の顔がエドワード・ノートンに似ているのも狙いだろう。
ただ、「信じていたものが嘘かと思ったらやっぱり真実でした」と言う落ちなので、そう言うどんでん返し作を知らない人はむしろ拍子抜けするのではないか。映画オタクが作った映画オタク向け作品と言える。
サイバー犯罪の描き方としてはかなり古臭いというか、そこまでリアルで侵入できるんだったら爆弾でも仕掛けたら?と感じるほどのアナログな手法。なんで映画やドラマのハッカーはフードをかぶるんだろうか。
ヒロインの魅力も主人公の魅力も、主人公の仲間たちの魅力もいまひとつ伝わってこない。ハッキングと主人公の悩み、加えてラストのトリック、主題が結びつきが足りていないので、この物語を通して描きたいことが浮かび上がってこない。
それと肝心のラスト、証人保護プログラムを手に入れるために主人公たちがとった行動だが・・・針の穴に糸を通すような作戦なのはどうにも気に掛かる。全員があの状況で逃げるのにはユーロポール内部に入って偽造書類を作るしかなく、そのためには捜査官に協力してもらう必要があり、そのためには嘘の多重人格を全面的に同情してもらう必要が・・・って流石に作戦として厳しすぎやしまいか。
短めのサスペンスとしては気楽に見られるが、それ以上にお勧めする気にはならない、といった感じ。