『ディープ・ブルー』★★★★☆
サメ映画流行りの昨今だが、筆者が観たことがあるのは『ジョーズ』と『シャーク・ネード』のみ。本作はとてもよく出来たエンタテインメントだった。
サメ映画に限らずモンスターパニックものでありがちなよくない展開として「人間が馬鹿すぎる」がある。襲ってくるのがモンスターないし凶暴な動物なので、人間が頭よすぎるとシナリオが成り立たないためだ。そのため、襲われるために部屋に籠もる奴、襲われるために逃げ出す奴、襲われるために重要な施設を破壊する奴などが頻出し、観ているとイライラする。
本作はそこを突破するため、サメのほうを賢くする、という的確な手段を取った。そのため、人間たちはその時点で可能なベストの手を打ち続けるが、サメの頭の良さによって負ける、という展開が作れていて、うんざりさせられることがない。
また、なぜサメを頭よくするのか、という根本的なところにもきちんと理由付けがしてある(サメじゃ無くてもよかったんじゃないかという気はしないでもないが)。その理由付けを元に、必然性のある舞台設定がなされているのも本作をダレさせないポイントだろう。
信仰深い登場人物を出してサメを「悪魔」と位置づけているのも面白いが、ここはもっと広げて話に深みを持たせてもよかったんじゃないか……という気がするが、やり過ぎると無駄に重くなってしまうだろう。ただ、「このまま知能の高いサメが暴走し続けるとこの先何が起きてしまうのだろう」という大局的な視点は、加えても面白くなるように思った。ヒッチコックの『鳥』のラストに辿り着く怖さは、その辺りにもあると思う。
CGの出来が時代的なこともあってあまりよろしくはないが、サメの模型を使った描写は非常に秀逸なので、それほど興ざめにはならない。気楽に観る分には佳い作品。