『キングスマン』★★★★★
久しぶりに見返した作品。公開当時も2回映画館に観に行って、ブルーレイもすぐに購入した。やはりよくできた映画だと思う。見返す度に新しく、ああこういう狙いだったのか、という発見がある。
スパイアクション映画としては実はすごくあっさりしている。お話自体が新人エージェントの成長物語なので、実質スパイをやっているのは半分くらいなのだ。全体が常にダブルのストーリーラインで展開していくため、飽きさせる瞬間がない。
細部をよく見ていくといろいろ突っ込みどころはある。そもそもキングスマン自体、機密保持が結構甘いんじゃないか、とか。いろんな人が目撃している場所で平気で活動している上に、記憶を消したり口を封じたりは特にしない。ラストで主人公が窮地に陥ったのだって、候補生の機密保持が足りないからじゃないか?とか。
でもそんなことはもうとりあえずいいのだ。隅から隅までアイディアが詰まっていて、おざなりなポイントがない。冒頭の導入部からカースタントからラスト直前まで、見覚えのあるシーンは全くない。過去のスパイアクション映画のパロディも演じつつ、それを現代的な洒脱さに変換出来ている。
一度陳腐化した「典型」は、限界まで積み上げると今度は記号の集積になって情報量が増大し、見応え・内容の密度を上げることが出来るのだ。「愉快なスパイアクション」あるあるを隅々まで満たして凝縮し、さらにその裏をかけば、難解さがなくても新しいことが出来る。だから、過去の作品に通暁することで新しいものを生み出すことは、やはり可能なのだろう。