『クラークス』★★★★☆
モノクロで至って平凡な若者のうんざりするような一日を描いたショートスケッチ集。主人公はコンビニで休日出勤させられ、ろくでもない客や妙な友人たちの相手に負われるばかりで、面倒事が押し寄せてくる。取り立てて何かが起きる作品ではないが、細かい笑いは頻発する。実際コンビニでバイトなんかしていたら、この手の訳のわからない客などいくらでもやってくるだろう。
けれど不条理劇のように見えて、描こうとしていることははっきりしている。終盤に語られているように、今の自分を選んだのは自分なのだ。別に誰かに監禁されているわけではない。現代の人間なら、去ろうと思えばいつでも自分の置かれた場所から去ることが出来る。
「なんでこんなくだらない悩みに振り回されてるんだ?」と主人公の巻き込まれる馬鹿馬鹿しいシチュエーションに笑っていると、ふとした瞬間、それが自分に跳ね返ってくることに気づいて真顔になる。大きく盛り上がるところがあるわけではないが、次第に登場人物のことが好きになってくる。短めであっさり観られる作品なので、全体として悪くない。