週に最低1本映画を観るブログ

毎週最低1本映画を鑑賞してその感想を5点満点で書くブログ。★5つ=一生忘れないレベルの傑作 ★4つ=自信を持って他人に勧められる良作 ★3つ=楽しい時間を過ごせてよかった、という娯楽 ★2つ=他人に勧める気にはならない ★1つ=何が何だかわからない という感じ。観賞に影響を及ぼすような「ネタバレ(オチなど)」は極力避け、必要な場合は「以下ネタバレあり」の記載を入れます。

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』★★★★☆


『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』TVスポット_F(大ヒット上映中!)

 

 楽しみにしていたガチャピンチャレンジ、ならぬ「トム・クルーズチャレンジ」をようやく鑑賞。いやもう、イーサン・ハントがどうとかストーリーがどうとかじゃなく、トム・クルーズがどれぐらい頑張ってるかを観るシリーズだと思っているので、筆者の中ではガチャピンに一番印象が近い。

 さて、感想としてはシリーズで一番盛り上がった、という評価も納得の仕上がり。このシリーズは筆者の中ではかなりアベレージポイントの高いものなので(★2つが『II』、★3つが『I』、他は全部★4つ、という印象)、そこまで画期的、とまでは感じないが、さすがの安定感ある完成度だった。脚本無しで撮りながらストーリーを決めていった、と裏話を見かけたが、そうは感じさせない複雑な筋立てで翻弄してくれる。

 

 そう、★が1つ減じてしまったのはこの複雑性にある。ストーリー前半はスパイ映画特有の「ミッションの転がり」が連続して、今現在の主人公の目的が何なのかが今ひとつ捉えづらい。今、イーサン・ハントは何をやっているんだ?としばらく考えなければならない場面もいくつか存在するのだ。シーンごとに狙いが変化していき、さらに二重三重の裏切り、誰も信用出来ない不安も重なる。

 昔のように「あのトランクを取り戻すんだ」では作品が保たなくなってしまったのは、『ダークナイト』や『スカイフォール』以後のヒーロー&アクション映画の悲劇かも知れない。上手くいった作品はいいのだが、たとえば『慰めの報酬(★2つ)』や『アトミック・ブロンド(★2つ)』のような大混乱を来す可能性も常にある。

 

 ただ、本作はプルトニウムの奪還、という最小限の明確な目標は設定されていて、転がっていくのはこれを最終的に達成するために要求されるミニクエストのほうなので、細かいことは気にせず、目の前のアクションを楽しむ、という姿勢でもいいかもしれない。一応、サブプロット群にも一貫した筋は通っている(と思う)。

 その他問題点としては、「IMFの失態によって発生した世界の危機をIMFとイーサン・ハントが根性と偶然の力で救う」という根本的なプロットのマッチポンプ的構造があるが、これはシリーズ全作品そうなので突っ込んではいけない(力強く)。むしろ、そういうシーンが来たら「待ってました!」と手を叩くぐらいがちょうどいい。

 

 別件で問題があるとすれば、「予告しすぎ」問題があるだろう。ぶっちゃけた話、予告編で観られないアクションは1つも存在しない(その気になればほぼすべてのアクションやスタントを予告編で観ることが出来る)。なので、映画を観ていても、「あー次は予告のあのシーンが来るのか」と答え合わせのような感覚が続くばかりで、驚きはあんまり得られない(全く、とは言わない)。まあ、楽しみにしすぎて予告編を手当たり次第に見てしまった筆者が悪いのだが、もうちょっと隠し球を設けて欲しかった。前作『ローグ・ネイション』ではそれがあったのだ。

 また、期待していたスタントシーンにも、「ホントにやってる」からこその問題点が見えた。CGだといかようにも補正出来るところが、「マジでやっててマジで撮影している」がために、アップになりすぎたりブレが激しくなりすぎて、何やってるのかわからなくなってしまったシーンがいくつか見受けられたのだ。これはもういたしかたないことなのだろう。

 実際にやっている、が売りのアクションシーン、普通ならスタントマンやCGで充分だろう、と思えるシーン、特にヘリコプターアクションは、実写である価値が十二分にあったのだ。やはりコンピューター・シミュレーションには、特に自然の美しさを再現するときに限界が生じる。無数にある木の葉、風の動き、太陽光の微妙な陰り、その他無数の複雑な要素を完璧に再現するのは極めて困難で、それを「ただ本当にやる」という方法で突破してみせているのはさすがの一言だった。

 スカイダイビングシーンもそうだが、世界は美しい、というシンプルな姿を超絶アクションと共に見せてくれるトム・クルーズのエンターテイナーとしての姿勢は、今回特に輝いていた。

 

 また、今回特筆すべき点としては、ヘンリー・カヴィルの頑張りがあるだろう。トムが俳優の職分を越えて頑張りすぎるのはいつものことなのだが、カヴィルは別にスタントの壮絶さで売っている俳優ではないはずだ(スーパーマン以外の役を知らないのだが)。なのに、トムほどではないにしても、相当部分を自分自身で、それもかなり危険なスタントも含めて演じているのには恐れ入った。「え? これもマジでやったの?」と感じたシーンも(特に終盤)多い。格闘シーンの格好良さも、長い手足を駆使した正当派の格闘術というトムとは全く別種の迫力で、見応えも抜群だった。

 

 というわけで粗は相当に見受けられるが、この作品でそこを指弾するのはお門違いだろう。満足。

 

 ・・・・一個だけ、ハリウッド映画での核爆弾やプルトニウムの扱いの粗さは、どうにかならないものなのだろうか。『ダークナイト・ライジング』でがりがり引きずられている原子爆弾を観たときも苦笑を禁じ得なかったが、今回のドラゴンボール並みの手軽さでぽんぽん素手で扱われているプルトニウムボールにも頭を抱えた。お前ら全員被曝してるぞ!と言いたくなったが・・・・野暮なのだろうな。

 日本映画では『太陽を盗んだ男』ですらしっかりした防護服の描写と、重篤な被曝の描写を入れているあたり、やはり基礎的な知識の違いなのかも知れない。